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夜道怪
保健室。
座敷童子の童子の独り言を聞いていた者がベッドの下から出てきた。
「お困りのようですねー」
「あなた誰? ここの生徒・職員じゃないわね。目的は何?」
「あっしはただ、あんたの願いを叶えてたいだけですよー。さぁ、願いを言ってくだせえ」
見た目は僧。
霊力はあるみたいだから、おそらく妖怪。
でも、なんでベッドの下なんかに……。
「あなた、名前は?」
「……夜道怪」
なるほど。影……いえ闇を操る妖怪ね。
昔は子どもを誘拐したりして人々を困らせていたというものを聞いたことがあるわね。
「そう、あなたが。でも、あなたにそんな力はないはずよ」
「力とは使い方次第で粘土のように形を変えることができる。そうは思いませんか?」
「そうね。なら、この私の願いを叶えてみせなさい。私のこの気持ちが雅人さんまで届いたら、あなたのこと認めてあげる」
「承知しました。今の言葉、忘れないでくださいね」
彼はそう言うと影の中に潜った。
「期待はしていない……けど、どこかで期待している私がいる。私って嫌な女ね……」




