419/1936
噴水前
保健室。
座敷童子の童子はベッドに横になっていた。
別に体調が悪いわけではないが、朝から頭がボーッとしているらしい。
「……どうして私は大人になれないのでしょうか」
座敷童子は大人になれない。
なぜ見た目が一切成長しないのか。
それは今のところ誰にも分からない。
最初の座敷童子が誰なのかが分かれば、その理由が分かるかもしれないがその者が今も生きている保証はどこにもない。
「これじゃあ雅人さんと噴水前で夜景をバックにキスができません。ああ、どうして私は座敷童子なのでしょう」
文字の力で見た目を変えることはできるが、それは一時的なものだ。
それに一気に成長すると歩幅が変わって歩き方が変になったりバランスを取りづらくなってしまう。
見た目を変えると色々困るのだ。
「誰か、この呪いを解いてくれる人はいないのでしょうか? まあ、いませんよね。はぁ……私は一生子どものまま生きていくしかないのでしょうか」
そんな彼女の独り言をベッドの下で聞いていた者が約一名いた。




