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ものさし

 座敷童子の童子わらこがやっと目を覚ました。

 もう夕方なんだが……。

 というか、ずっとソファに座っているせいでおしりがジンジンするんだが。

 あと、お前の頭を膝に乗せてるからか膝から下に血が通ってないような感じになってる。

 はぁ……まあ、お前が元気になったから良かったけど。


雅人まさとさん……」


「なんだ?」


「キスしてください」


「ああ……って、キ、キキキ、キス!?」


「はい、そうです。一刻も早くキスしないと私はあなたを襲ってしまいます。性的な意味で」


 せ、性的な意味で!?

 彼女は僕の手をにぎにぎしながら、僕の顔をじーっと見つめている。


「い、いや、い、いきなりはちょっと……」


「そうですか。では、あなたの〇〇に〇〇をして〇〇を〇〇します」


「そ、それは嫌だな……。わ、分かったよ。やればいいんだろ、やれば」


 僕が彼女にキスをしようとすると彼女は僕のひたいにデコピンをした。


「あいたっ! な、なんだよ! いったい何が不満なんだ!」


「あなたが私にしようとすると、あなたの妹が絶望して、また例の事件のように暴走します。なので、私の方からあなたにキスをします」


「そ、そうか。分かった」


 彼女はムクリと起き上がると僕にソファに横になるよう指示した。

 僕がしぶしぶソファに横になると彼女は僕の手首を縄で拘束して手を使えないようにした。


「おい」


「なんですか?」


「文字の力をこんなくだらないことに使ってもいいのか?」


「文字たちは自分にできることしかしません。それを悪用しようとするものに罰を与えるには同じ文字使いでなければできません。そして、今あなたの手首を拘束している縄はあなたを逃がさないようにしているだけで決してそういうプレイをしたいわけではありません」


 本当かなー?


「なんですか? その目は。まさか私を疑っているのですか?」


「いや、だってお前結構Sだから」


「あなたのものさしだとそうなのですね。ちなみに私のものさしだとそうはなりません」


「そうか……」


「はい、そうです」


 良かった、いつもの童子だ。


「どうして笑っているのですか? まさか興奮しているのですか?」


「いや、違うよ。ただ、やっといつも通りの童子に戻ったなって」


 彼女は目をパチクリさせると自分のキャラが崩壊しないように少しきつめにこう言った。


「ガキはおとなしく私の相手をしなさい。ほら、早く」


「はいはい」


「まったく……あなたという人は。でも……私はそんなあなたのことが……」


「えっ? なんだって?」


「な、なんでもありません! はむっ!」


「……っ!?」


 彼女は自分が満足するまで僕のくちびるを何度も何度も奪った。

 苦しそうな感じはしない。今の彼女はすごく幸せそうだ。

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