夢の世界
僕たちは今、枕返しを探している。
やつは夢を壊すのが三度の飯より好きな存在だ。
いたずら感覚でやっているため悪意はない。
しかし、一度夢を破壊されてしまうと修復するのは難しい。
一番手っ取り早い方法はやつを倒すこと。
それは僕のとなりにいる座敷童子の童子に頼もうと思う。
だって、彼女は文字使いなのだから。
「面倒なことになりましたね」
「え? 何がだ?」
「夢の世界で文字の力を使うと暴走する可能性があるんですよ」
「え? そうなのか? じゃあ、どうやって枕返しを倒すんだ?」
彼女は僕を指差す。
え、まさか……。
「ぼ、僕がやつを倒さないといけないのか?」
「あなたの鬼の力はあなたの体の一部のようなものなので夢の世界で使用しても問題ありません。ですが、文字の力は違います。文字に宿っている力を借りているだけなので」
そうだったのか。文字の力って使ってことないから、よく分からないんだよな。
「そっかー。で? 枕返しの居場所に心当たりはないのか?」
「ないわけではないのですが……なにせ夢の世界ですから常に変形している空間で何かを探すとなると空間自体を怯えさせないと無理ですね」
「それができたら苦労しない……か。はぁ……まったく、夢の世界って案外居心地悪いんだな」
僕がそのへんにあった石を蹴ると、それは夢の世界を壊し始めた。
壊れる音はまるでガラスのようだ。
「あれ? 夢の世界って、こんなに脆いのか?」
「そのようですね。まあ、これできっと向こうから現れますよ」
「だといいんだが……」




