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枕返し

 朝起きると僕の胸の上で座敷童子の童子わらこがスウスウと寝息を立てていた。

 寝てる時はすごく可愛いんだけどなー。

 僕が彼女の頬を人差し指でツンツンとつつくと、彼女はその指を口の中に入れてチュパチュパ吸い始めた。


「なーんか前にもこんなことがあったような気がするなー」


「まちゃとー……ちゅきー……」


 既視感がある。

 気のせいかな?

 うーん、どうだろう。

 たしか、童子わらこ(妹)が生まれる前にこんなことがあったような気がするなー。

 僕がそんなことを考えていると童子わらこ(姉)が目を覚ました。


「おっ、起きたか。おはよう、童子。よく眠れたか?」


「うん! よく寝たー! まちゃとはー?」


 まちゃとって……寝ぼけてるのか?


「うん、よく眠れたよ」


「そっかー。良かったー。えへへー」


 な、なんでこんなに機嫌がいいんだ?

 普通に怖いんだが。


「な、なあ、童子」


「なあにー?」


「昨日のこと覚えてるか?」


「きのう? えっとねー、まちゃとが浮気してー、私となちゅきちゃんにバレてー、両方に頭を下げてー、私と一つになったー」


「うん、最後のは違うな。同じ部屋で寝たのは事実だけど」


 こいつ、幼児退行してるのかしてないのか、よく分からないな。


「そうだっけ? まあ、いいや。まちゃとー、抱っこしてー」


「まちゃとじゃない。雅人まさとだ。えっと、抱っこはもう卒業しなさい」


「やだ! やだー! 卒業なんてしーなーいー! 早く抱っこしてー!」


 なんでこいつは急に幼児退行するんだろうな。

 情緒不安定なんだろうか?


「はぁ……今日だけだぞ」


「わーい! やったー! まちゃとー、だいちゅきー!」


 なーんで僕がこいつの子守をしないといけないんだ?

 まあ、いつもお世話になってるから今日はその恩返しをしてやろう。


「よし、それじゃあ、ここから出ようか」


「それはダメれす。まちゃとは今日一日、ここにいないとダメなんれす」


 なぜそうなる?

 ここ、灰色の空間なんだが。

 家具とか一切ないんだが。

 ベッドだって、なんかそこにあるような気がするなーって感じの認識なんだが?


「そうか。じゃあ、それでいいよ。で? 何して遊ぶんだ?」


「イチャイチャ」


 は?


「今日は一日中、イチャイチャしたい気分なんれすー。だから、まちゃとは私とイチャイチャしなちゃい」


「お、おう。えっと、じゃあ、よしよし、童子は可愛いなー」


「そ、そんなー。私、そんなに可愛い?」


「ああ、もちろんだとも」


「そっかー。えへへへ、嬉しいなー」


 うーん、やっぱりこれはおかしい。

 なんか誰かに見られてるような気がする。


「おい、見てるんだろ? 童子」


「おやおや、もうバレてしまいましたか」


 床(?)から出現したのは僕が知っているジト目と真顔が特徴的な幼女だった。

 彼女が出現した直後、幼児退行した童子は消滅した。


「今のはいったい何だったんだ?」


「さぁ? けれど、何者かが私たちの夢を壊そうとしています。これはおそらく……」


「枕返しか」


「まあ、おそらくそうでしょうね」


「はぁ……一度いい夢を見させてから夢を壊す。上げて落とすの好きだな」


「ですね」


 ということで、夢の世界にやってきたわけだが。

 これからどうしようかな。

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