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神聖な儀式

 上書き完了。


「お兄ちゃん」


「な、なんだ?」


「帰ったら続きしようね」


「つ、続きって……お前、まさか……」


「冗談だよ。なに本気にしてるの?」


「か、からかうなよ……」


「あははは、お兄ちゃんは可愛いなー。それに……お兄ちゃんとのキス……とっても気持ちよかったよ」


「お、おう……」


 夏樹なつき雅人まさとの実の妹)は僕の手を握りながら、僕の顔をじっと見つめている。

 それには殺意やら憎悪やらは込められておらず、愛しい我が子を見守る母親のような目をしていた。

 僕はお前の子どもじゃないぞ。

 僕はお前のお兄ちゃんだ。まあ、同じ日に生まれてるから、どっちが上でもいいんだけど……。


「ねえ、お兄ちゃん」


「な、なんだ?」


「お兄ちゃんは私とシたい?」


「は、はぁ? いきなりなんだよ」


「いいからいいから」


「う、うーん……は、初めては痛いらしいし、それに実の兄妹でそんなこと……」


「お兄ちゃんは性行為自体に興味がないってわけじゃないんだよね?」


「うーん、まあ、そうだな。けど、そこまでシたいってわけではないし、新しい命を作るのにどうして女性側だけ痛い思いをしないといけないのかが分からないから」


「お兄ちゃんはあれだね。性行為=神聖な儀式みたいな感じだと思ってるんだね」


「え? あー、まあ、そうだな」


 保健室のベッドの上でなんて会話をしてるんだ。

 まあ、僕たち以外誰もいないから問題ないけど。


「そんな風に考えなくてもいいと思うよ。ヤる理由なんて人それぞれなんだから」


「うーん、そうなのかな……」


 でも、欲望のおもむくままに行動してしまったら、ただの獣になってしまう。


「そうだよ。だから、そんなに難しく考える必要はないよ」


「そう、なのかな……」


 僕はその日、家に帰るまでずっとそのことについて考えていた。

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