定期検診
保健室。
「ちょ、お前! どこ触って!」
「静かにしてください。ただの定期検診です」
だからって、保健室まで拉致らなくてもいいような。
「何か言いたそうですね。何ですか? 言いたいことがあるなら、はっきり言ってください。さもないと、その口を塞ぎますよ。何で塞ぐのかはご想像にお任せします」
「いや、その……前もって言ってくれれば良かったのになーと思って……」
「あなたは私を警戒していますからね。こうでもしないと来てくれないと思ったのです」
いや、それはお前の日頃の行いのせいだろ。
「何ですか? まだ何かあるのですか?」
「いや、何にも……」
「そうですか」
僕は上半身裸の状態でベッドに腰掛けている。
座敷童子の童子は聴診器で僕の心臓の音を。
「……おい」
「何ですか?」
「何ですか? じゃない。聴診器で僕のスイッチを弄るな」
「スイッチ? どこですか? それは」
こ、こいつ! 僕に言わせるつもりだな!
「そ、それは……。うっ! ちょ、ちょっと待て! なぜ弄る速度を上げたんだ?」
「あなたの反応が面白……じゃなくて、あなたの反応が可愛いからです」
か、可愛い? こいつからそんな言葉が出るとは思わなかったな。
「あー、えーっと……そうなのか。でも、あんまりされると変な気分になるからやめてくれ」
「やめろと言われるといじめたくなってしまうのはなぜでしょうね……」
彼女は僕に抱きつくと、耳元でこう囁いた。
「女性の体に興味はありませんか?」
「な、ないと言ったら嘘になるな。けど、わざわざ学校の保健室でそんなことをする必要はないだろ?」
「そんなこと、とはどんなことですか?」
くっ! こ、こいつ! 今日はいつもよりSだな!
「し、知るか! そんなこと! それより、早く離れろ!」
「嫌です。離れません。昼休みが終わるまで私をギュッと抱きしめてください」
もしかして僕に甘えたくなったから、ここまで連れてきたのか?
うーん、よく分からないな。
「あー、はいはい、分かりましたよー」
「ああ……雅人さんに包まれている時が一番幸せです」
なんでそんなに息を荒げているんだ?
というか、定期検診はどうした?
うーん、まあ、いいや。
しばらくこのままでいよう。
僕は童子の頭を撫でながら、彼女の温もりを感じていた。




