コイン占い
登校中、夏樹と童子はずっと僕の腕に腕を絡めていた。
そんなにくっつかなくてもいいのに……。
「はぁ……疲れた……」
「どうしたの? 雅人。朝から元気ないねー」
「あー、まあな……」
僕の幼馴染である『百々目鬼 羅々』は僕の席にやってくると、僕の頭を撫で始めた。
「おい、どうして僕の頭を撫でるんだ?」
「え? いや、普通に慰めてるだけだよ。嫌だった?」
「いや、別にそんなことはないけど……」
「けど?」
「人前でそういうことするなよ。恥ずかしいから」
「恥ずかしがることないよー。私たち幼馴染なんだからー」
幼馴染でも僕は男でお前は女だろ?
あんまりベタベタされると困るんだよ。色々と。
「幼馴染でも、あんまりベタベタされると困るんだが……」
「なんでそんなに意識するの? あっ、もしかして私に気があったりするの? ねえねえ」
「う、うるさい! もうお前どっか行けよ!」
「いーやーでーすー。まだチャイム鳴ってないし、今日の占いの結果まだ見てないし」
占い? こいつ、占いに興味あるのか。
「占いか……。星座占いか?」
「ううん、違うよ。コイン占いだよ」
「コイン占い? 裏と表しかないじゃないか」
「あー、えーっとね、たしかコインを壁に投げて、そのめり込み具合で占うんだよ」
それ、できないやついると思うぞ。絶対。
「そうなのか……。それってコインじゃなくてもいいのか?」
「え? あー、まあ、いいけど……」
ふむ。なら、ノートを少しちぎろう。
僕はノートを少しちぎってコインを作った。
「よし、できた。それじゃあ、行くぞー。そおおれっ!!」
紙でできたコインは壁を貫通してどこかに飛んでいってしまった。
「あっ、す、すまん。ちょっと力入れすぎた」
「あー、まあ、予想通りの結果だから大丈夫だよ。えーっと貫通した場合は肩の力を抜くと吉、だってさ」
「そうか。ちなみにお前はどうだったんだ?」
「え? 私も同じ結果だったよ。ほら」
あー、ホントだ……。壁、貫通してる。
「お、お前なかなかやるな。というか、いつのまに投げたんだ?」
「雅人が投げた後、すぐだよ」
「そっか。で、この穴どうするんだ?」
「それは雅人の霊力でなんとかなるでしょ?」
「お前、最初からそうするつもりだっただろ?」
「そ、そんなことないよー。それより早く直さないと先生来ちゃうよ」
うーん、なーんか損した気分だな。
でも、まあ、いい息抜きにはなったな。
「はいはい、やりますよー」
「ありがとう、雅人。あとでハグしてあげるよ」
「結構です」
「えー、そんな遠慮しなくていいのにー」
お前とハグしたら、お前のバレーボールが当たるんだよ。それくらい察してくれ。
僕はそんなことを考えながら妖怪壁に霊力を分け与えた。
その直後、壁は元通りになった。




