おやすみなさい
地獄(耳掃除)が終わると夏樹と童子は今日は僕と寝たいと言い出した。
僕が断ろうとした……が、二人の期待の眼差しには敵わなかった。
その日は二人に体を拭いてもらった。
いたずらされなかったとは言い切れないが、しっかり体を拭いてもらえたため、かなり疲れが取れた。
「じゃあ、電気消すよー」
「ああ、頼む」
夏樹は電気を消すと同時に俺に抱きついた。
「あー、お兄ちゃんのにおいだー。ねえねえ、お兄ちゃん。ちょっとだけ首筋噛んでもいい? いいよね?」
「……ちょっとだけだぞ」
「わーい! やったー! お兄ちゃん大好きー! それじゃあ、いただきまーす。はーむっ♡」
夏樹は俺の首筋に甘噛みすると嬉しそうな声をあげた。
僕が童子を無視して寝ようとすると童子が僕の耳に甘噛みをした。
「ちょ、いきなり変なことするなよ。あー、びっくりした」
「あなたが私を無視するからです。雅人さん、私もあなたの首筋に甘噛みをしてもいいですか?」
「え? やだ」
「なーんてことを言う人には一晩中、耳が痒くなる呪いをかけます」
あっ、これ拒否したら死ぬやつだ。
「ごめんなさい。ぜひやってください」
「最初からそう言えばいいのです。では、失礼します」
座敷童子の童子はまず僕の首筋に軽くキスをした。
そのあと舌で首筋を少し舐めた。
注射をする前にやるアルコール消毒か何かかな?
童子は俺の首筋に甘噛みするのと同時にキスマークを付けた。
あの……僕はあなたのものじゃないのですが……。
というか、そんなことされたら学校で目立……あっ、それが狙いか。
僕はあなたのものですってことをみんなに見せつけたいんですね。
童子はそれを何度か繰り返すと、最後に僕の耳を舐めた。
「雅人さん、私と結婚する気はありませんか?」
「今のところないです」
「そうですか……。では、これから毎晩あなたの首筋を甘噛みしますね」
「それはやめてください。お願いします」
「ふふふふ、冗談ですよ。あなたは本当にいじめがいがありますね。ふふふふふふ」
怖い、怖い、怖い、怖い。
何なんだよ、今の気味の悪い笑い声は。
はぁ……もういいや。今日はもう寝よう。
二人は気が済むまで僕の首筋に甘噛みをしていた。
僕は無理やり自分の意識を遮断した。
おやすみなさい。




