透明な液体
検査が終わると夏樹は僕のとなりで満足そうな笑みを浮かべながら体をクネクネさせていた。
やられた側の僕は二人に背を向けた状態でベッドに横になり両手で顔を覆い隠していた。
実の妹にあんなことやこんなことをされたのだから当然の反応だ。
まあ、約一名そんな状態の僕にこんなことを言ってきたのだが。
「雅人さん、五感のチェックは終わったので次は霊力の流れを調べさせてください」
「……やだ」
「え?」
「もうイヤだ! なんで退院したその日に体を弄られなきゃいけないんだよ! 少しは加減しろよ!」
童子は大きなため息を吐く。
「雅人さん、私は別にあなたをいじめたくてやっているわけではないのですよ? 私はあなたに後遺症が残っていないかを調べたいだけです。なので少しは我慢してください」
「少し!? 僕は実の妹にあんなことやこんなことをされてるんだぞ!? あれ以上のことをやるのなら僕は今すぐここから出ていくぞ!」
「大丈夫です。あれより酷いことはしません」
僕は童子の方に目を向ける。
「本当か?」
「はい、本当です。この顔が嘘をついているように見えますか?」
「お前はいつも無表情だから、よく分からないんだよ」
「では、とびっきりの笑顔をお見せします」
彼女のとびっきりの笑顔を見た僕は吐き気と恐怖に襲われた。
「も、もういい! 今すぐその顔やめろ!」
「分かりました。それで、どうしますか? やりますか? やりませんか?」
そんな巻きますか? 巻きませんか? みたいな言い方するなよ。
「や、やるよ。やればいいんだろ。ほら、とっととやれよ」
「だそうです。夏樹さん、しばらくの間、雅人さんの手足を拘束してください」
「オッケー」
え? ちょ、そんないきなり……。
僕はあっという間に夏樹の黒い長髪に拘束されてしまった。
動こうとすると締まりが強くなってしまうため逃げることはできない。
童子は両手に透明な液体を付けると僕の上半身にそれを塗り始めた。
な、なんだ? これ……。なんか急に頭がぼーっとしてきたぞ。
ああ、ダメだ。どんどん体が敏感になっていく。
それからのことはあまり覚えていない。
覚えているのは、ずっと体がふわふわしているような状態だったということだけだ。




