抱き心地は……
僕は今日起こった出来事……主に鬼人絡みのことを夏樹に全て話した。
夏樹は僕が言霊の力の反動を受けているのをいいことに息をするように布団の中に入ってきた。
一応、全身に痛みがあるため夏樹を追い出すことも、その場から逃げることもできなかった。
まあ、別にその必要はないのだが。
「なるほどねー。私のためにそこまでしてくれてたんだ。なんか申し訳ないなー」
「お前が気にする必要はないよ……。あー、それにしても痛いな……。どうにかならないのかな……」
僕がそんなことを呟くと夏樹は僕の額に自分の額を重ねた。
「ちょ、夏樹。いきなり何す……」
「お兄ちゃんは私に内緒で私のためにお兄ちゃんがやりたくないことをしました。私はすごく悲しいです。なぜなら、今回の一件は私がけりをつけるべきだったのに、私はそれに気づかずお兄ちゃんに任せてしまったせいでお兄ちゃんが今、すごく苦しんでいるからです」
な、なんで急に丁寧口調になったんだ?
「お、おう」
「おう、じゃないです。お兄ちゃんは何でもかんでも自分一人でなんとかしようとする悪い癖があります。それは改善しようと思えばできるはずです。なぜなら私のお兄ちゃんはやればできる子だからです」
つ、つまり、どういうことだ?
「え、えっと……つまり?」
「えーっと、つ、つまり……何でもかんでも一人で抱え込まれると迷惑だから、これからはほうれんそうを意識してほしいということです」
報告・連絡・相談。
うん、それはとても大事なことだな。
すっかり忘れていたよ、教えてくれてありがとう、夏樹。
「了解。これからは気をつけるよ」
「それはこれからの行動で示してください。いいですね?」
はい、分かりました。
「はい」
「よろしい。では、今日は私を抱き枕にして寝てください。昨日のお礼です」
逆は別にいいと思う。
だが、僕がそれをするのはちょっと……。
「お兄ちゃん、私のこと嫌いなの?」
「い、いや! そんなことはないよ! けど、僕がそんなことをしたら、り……理性を保てなくなるかもしれないから……」
理性ねー。
「今はそんなこと言ってる場合じゃないよ。明日に備えて今日はおとなしく私を抱き枕にして寝なさい! これは決定事項です! ついでに言っておくと、お兄ちゃんに拒否権はありません!」
「そ、そんなー。あんまりだー」
結局、僕はその日、夏樹を抱き枕にして寝た。
抱き心地は……最高だった。




