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男の子の日

 あー、これはダメだな……。

 布団に入ってからずっと全身が痛い。

 耐えられないほどではないが、今日は一睡もできないだろう。

 それにしても痛い。筋肉痛の痛みじゃない。誰かに肉をつままれているかのようだ。

 言霊ことだまの力の反動って、こんな感じなのか。

 めったに使うものじゃないな、これは。

 雅人まさとが布団の中で丸くなっていると部屋の外から声が聞こえてきた。


「お兄ちゃん、起きてる?」


 こ、この声は……夏樹なつきだな、間違いない。電話の声じゃない。生の声だ。


「あ、ああ、起きてるよ。何か用か?」


「あー、えーっとね、今日一緒に帰ってる時から……というか、お兄ちゃんが待ち合わせ場所に来た時から気になってたんだけど、お兄ちゃん私に何か隠し事してない?」


 な、なぜバレたんだ?

 僕の演技はそこそこうまかったはずなのに!

 ま、まあ、それはいいとして。


「し、してないよ。というか、僕がお前に隠し事なんてするわけないだろ?」


「嘘。お兄ちゃんの呼吸、いつもより乱れてる。心拍数もおかしい」


 な、なんでそこまで分かるんだよ!

 あっ、そういえば僕の体の中には夏樹なつきの髪の毛があるんだったな。

 二口女である夏樹なつきにとって髪は手足みたいなものだから、それがどこにあろうと抜け毛だろうと周囲の状況が分かるんだよな。


「そ、そんなことないよ。僕はいつも通りだよ」


「そうかな? なら、どうしていつもより早く晩ごはんを食べて、お風呂に入って歯磨きをして、さっさと部屋に向かったの?」


 わ、忘れていた。

 夏樹なつきは僕のことになると僕以上に敏感になるんだったな。

 あー、ダメだな。完全に夏樹なつきのペースだ。


「そ、それは……え、えっと今日は男の子の日でな」


「お兄ちゃん、今日はこどもの日だよ。というか、そんな言い方したら勘違いされるよ」


 そ、それは知ってるんだけど……あー! やっぱり無理だ! 実の妹に心理戦で勝てるわけがない!

 弱ってる時は特に!!


「はぁ……降参だ。正直に全部話すよ」


「最初からそう言えばいいんだよ。それじゃあ、お邪魔しまーす!」


 夏樹なつきが僕の部屋に来る。

 なぜか嬉しそうに鼻歌を歌っている。

 はぁ……なーんか嫌な予感がするなー。

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