鬼人
月曜日なのに機嫌悪いやつ多いな。
いや、月曜日だからこそ、かな。
「邪魔するぜ」
「は?」
ズカズカと教室に入ってきたのは逆立った赤い髪と頭に生えた二本の角が特徴的な不良少年だった。
「俺は今日から、この学校の生徒になった怖いものなしの鬼人『山田 雅史』だ!」
『…………』
なぜホームルームが終わった後に来たのか。
なぜ自ら鬼人だということをバラしたのか。
というか、黒板に書かれた名前が地味にきれいだな。
クラスのみんなが反応に困っていると、やつは僕の方にやってきた。
「お前がこの学校のトップか?」
「は? いや、僕は別にそんなんじゃないよ」
やつは僕にグイと顔を近づける。
「けっけっけ。別に隠さなくてもいいんだぜ? お前、鬼憑きなんだろ?」
「まあ、一応そうだけど。それがどうかしたのか?」
やつは急に真顔になる。
「俺は本気のお前と戦って、この学校のトップになりたいんだよ。ほら、早く代われよ。お前の中にいる鬼と」
「嫌だ、と言ったら?」
やつはニタリと笑うと、クラスのみんなの霊力を吸収し始めた。
「けっけっけ! どうだ? 俺と勝負する気になったか?」
「はぁ……鬼姫、頼む」
彼が彼女と入れ替わる。
彼女は真顔で静かにこう言った。
「失せろ」
「やなこった! 誰がそんなこと……って、あれ? あれあれあれあれ? あーれー!!」
どうやら、やつは鬼姫の言霊の力を知らなかったらしい。
その直後、やつの妙な技から解放されたクラスのみんなが僕に感謝した。
僕は別に特別なことをしたわけではないのだが。
まあ、その気持ちは嬉しいから、ありがたく受け取っておこう。
「この野郎! 俺に何をした! 妙な真似しやがって!」
「もう戻ってきたのか。今度は樹海にでも行ってもらおうかな」
というか、先に妙なことをしたのはお前だろ。
「はんっ! 俺と戦うのがそんなに怖いのか! この臆病者!」
「違うよ。単に面倒なだけだよ。それより早く席に着けよ。もうすぐ授業が始まるぞ」
えーっと、たしか一時間目は。
「そんなもん知るか! 今すぐ俺と戦え!!」
「おーい、授業始めるぞー。とっとと席に着けー」
国語のぬりかべ先生が出現する。
この先生の防御力は校内一だ。
「はぁ!? ふざけんな! そんなもんより、こいつとの勝負の方が大事だ!!」
「そうか。ならば、この俺を倒してみろ」
やつはニシッと笑う。
「いいぜ! 見せてやるよ! この俺の力を!! いくぜ! うおおおおおおおおおお!!」
「ふん、雑魚が。衝撃反射!!」
やつが先生を殴った瞬間、やつにその衝撃が反射した。
やつは放課後になるまで気絶していた。




