命拾いしましたね
静かすぎる。
まさかダーリンに何かあったんじゃ!?
家出中の白猫はリビングから二階にある雅人の部屋まで駆けていった。
部屋の前には座敷童子の童子(妹)がいた。
「あれ? 猫さんも雅人の様子を見に来たの?」
「ええ、そうよ」
彼女は部屋の扉を開ける。
「お先にどうぞ」
「あ、ありがとう」
家出中の白猫が雅人の部屋に入ると彼は夏樹(雅人の実の妹)と座敷童子の童子(姉)と共に眠っていた。
なんてうらやま……じゃなくて。
ううー! 先を越されたー! 悔しい!!
ダーリンと一緒に寝たい!!
どこかにスペースは……。
あっ、そうだ。
「とうっ!!」
彼女は彼の脇腹の上に飛び乗ると、彼の脇腹にしがみついた。
あー、幸せー。ダーリンの脇腹は私のものー。
「ふむ。じゃあ、私は足にしがみつこうかなー」
座敷童子の童子(妹)は布団の中に潜ると、彼の足にしがみついた。
いい足してるねー。むぎゅー!!
「……っ!! ご主人様の近くにメスたちが集まっているような気がする!!」
人造妖怪のふーちゃんは主人の安否を確認するために雅人の部屋に向かった。
今まで庭でカプセルンと草むしりをしていたため、手洗いとうがいをしてから向かった。
「ご主人様! 生きてる!?」
「……うー……お、重い……」
な、なんだ? これは。
皆、ご主人様の温もりを求めてやってきたのか?
それとも別の目的が……。
いや、今はそんなことどうでもいい!!
「私のご主人様から……はーなーれーろー!!」
『わー!!』
メスたちは彼女が放った水の弾丸をくらった衝撃で目を覚ました。
「せいっ!!」
『……っ!?』
彼女は水でできた球体にメスたちを閉じ込めた後、それを庭まで運んだ。
「とりゃあ!!」
メスたちは何事かと辺りを見渡した。
「お前たちは、ご主人様の眠りを邪魔した。私のご主人様に不快な思いをさせた。許せない。殺してやる。殺してやる……!」
メスたちが彼女の殺意に圧倒されていると雅人が目を覚ました。
「あー、よく寝たー。ん? なんか外が騒がしいな」
彼は部屋の窓を開けて庭に目をやった。
「おーい、みんなー。何してるんだー?」
「ご主人様! ご、ごめんなさい。起こしてしまって」
なんで謝るんだ?
「いや、いいんだよ。そんなことは。それより、そろそろ昼にしないか?」
「は、はいっ! 分かりました!! ……だそうです。命拾いしましたね」
メスたちは家の中に逃げ込んだ。
カプセルンは深いため息を吐いた。
 




