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すばらしい川の字

 お兄ちゃん、大丈夫かなー。

 少し様子を見に行こうかなー。

 夏樹なつき雅人まさとの実の妹)が雅人まさとの部屋まで小走りで向かった。

 彼女は彼の部屋の扉をそーっと開ける。

 彼女がベッドの方にやると、そこには……。


「…………」


 彼女は一度、扉をゆっくり閉じた。

 えーっと……なんで童子わらこちゃんが上半身裸のお兄ちゃんに抱き枕にされてるの?

 何をどうしたらそうなるの?

 べ、別にうらやましいってわけじゃないけど、ここは妹として一言言っておかないといけないよね、うん。

 彼女は妹というポジションを使って彼を誘惑する泥棒猫を撃退することにした。


「お邪魔しまーす」


 その小声に反応したのか、彼が「うーん」とうなった。

 彼女はその直後、ピタッと静止した。

 もしかして……起こしちゃった?

 セーフ? アウト?

 彼が起きる気配はない。

 どうやらセーフのようだ。

 ふぅ……ああ、良かった。

 お兄ちゃんの安眠をさまたげたらダメだよね。彼女は彼が起きないように、そーっとベッドまで近づいた。


「……お兄ちゃんの寝顔……かわいい♡」


 彼女はその場で体をクネクネさせた。

 あー、お兄ちゃんの寝顔を見ながら〇〇したい。

 あっ、でも、こっちを向いてる顔を見ながら〇〇するのもいいなー。

 おっと、私としたことがちょっと暴走しちゃったね。反省。

 さてと、それじゃあ、泥棒猫を排除……いや撃退しよう。


「ごめんね、童子わらこちゃん。でも、これは妹の使命なんだよ。許してね」


 彼女が童子わらこ(姉)に手を伸ばす。すると。


雅人まさとさーん、大好きですー」


「……うっ! ど、どうしよう。こんな幸せそうな顔をした童子わらこちゃんを起こすことなんてできない! でも! ここで引き下がったら妹の使命を果たすことができない! ああ! 私はいったいどうしたらいいのー!」


 あっ、そうだ。

 私もお兄ちゃんと一緒に寝ればいいんだ。

 そうすれば、お兄ちゃんも私も、もちろん童子わらこちゃんも幸せだよね!!

 彼女は嬉しそうに鼻歌を歌いながら、彼の背中に引っ付いた。


「はぁ……はぁ……お兄ちゃんのにおいがする。すっごく濃厚で優しくていいにおいがする。ああ、すごーくいい、気分……スヤァ」


 すばらしい川の字が完成しました。

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