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指圧

 雅人まさとの部屋。


「えー、では、とりあえず服を脱いでください」


「一応、くけど下は?」


 童子わらこ(姉)は「結構です」と言いながら、『治癒』という文字を書いた。

 それは彼女の両手に宿ると、白く穏やかな光を出し始めた。


「一応、上は脱いだけど、僕はこれから何をすればいいんだ?」


「何もしなくていいです。というか、しないでください。あなたは私に体を預けていればいいのです」


 もっと違う言い方はできないのか。

 雅人まさとは心の中でため息をいた。


「了解。お前の好きにしてくれ」


「分かりました」


 しまった……誤解されるような言い方をしてしまった。

 まあ、いいか。童子わらこなら大丈夫だろう。

 ベッドの上に座っている雅人まさとに近づいていく童子わらこ(姉)の脳内は今、こんな感じ。

 あー、今すぐあの胸に飛び込みたい!

 ギュッと抱きしめてほしい!!

 というか、抱いてほしい!!

 い、いけません! 今は治療に専念しないといけないのに、こんな卑猥ひわいなことを考えていたら雅人まさとさんに気づかれてしまいます!

 お、落ち着きなさい! 私!!

 あー、でもやっぱり興奮する……。

 どうしてこんなにもあなたのことが好きになってしまったのでしょう。

 罪な人ですね、あなたは。

 それとも、私がチョロいだけなのでしょうか?


「おーい、先生ー。起きてるかー?」


「あっ、はい、大丈夫です……って、先生?」


 あっ、そこに反応するのか。


「いや、まあ、今のお前は僕の体を治療してくれる医者だろ? だから、先生だ」


「なるほど。そういうことでしたか。では、いきますよー」


 彼女の小さな手が彼の胸に触れる。

 ああっ!! 頑丈な胸板!! すごくいい!!

 彼女が息をあらげているのに気づいた雅人まさとは彼女が緊張しているのかと思った。

 そのため、彼女を落ち着かせるために彼女の頭を撫でた。


「先生、緊張するなよー。ほら、リラックス。リラックス」


「あっ、はい、すみません。私としたことが少し、こうふ……いえ、緊張してしまいました」


 ん? 甲府?

 まあ、いいや。

 彼女は一度、咳払いをする。


「で、では、霊力の流れを安定させるために指圧を加えていきます。痛かったら言ってくださいね」


「りょーかい」


 それからはノリで背中にも指圧を加えていった。

 まあ、簡単に言うとマッサージである。


「……終わりです。もう服を着ていいですよ……って寝てますね」


「……寒い」


 え?

 彼女が彼から離れようとすると、彼は彼女を抱き枕にした。


「ちょ、ちょっと! 雅人まさとさん! こういうことは夜になってからしてください!」


「あー、あったかいなー」


 う、うーん……ま、まあ、私を抱き枕にすることで雅人まさとさんがしっかり眠れるのなら私はここから動きません。

 べ、別に抱きしめられて嬉しいとか、好きな人のぬくもりやにおいがあるから動きたくないとかではありませんからね!

 彼女はしばらくの間、顔を真っ赤にしていた。

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