永眠
座敷童子の童子(妹)がなぜか言霊の力を使えるようになった。
皆、彼女の言葉に逆らうことなく、それぞれの部屋に戻っていった。
*
雅人の部屋……。
「……さてと……お姉さん、雅人に言霊の力を使った反動が行かないようにするにはどうすればいいの?」
「そんなこと、誰が教え……簡単よ、反動があたしの方に来るように切り替えればいいんだから」
やっぱり逆らえない……。
どうしてこんなちんちくりんがあたしの力を……って、このちんちくりんはあたしの言霊の力とこれの元になったちんちくりんの文字の力のおかげでこの世に存在できているから、どっちも使えて当然よね。
「へえ、そうなんだ。じゃあ、早くそうして」
「い、イヤ……はい、分かりました」
く、クソ……!
体が……勝手に……!!
鬼姫は雅人の心身に言霊の力の反動が自分の方に来るようにした。
その際、彼女は胸の前で蛇口を捻るような動きをした。
「今のでおしまい? なら、もう雅人に体を返してあげて」
「誰が……返す……ものか……!」
抗ってやる!
自分の力に負けるなんてありえない!!
「もたもたするな! とっとと返せ!!」
「うっ……! くっ……! は、はい……分かり、ました」
彼女が雅人に体を返すと、彼女の魂に力の反動が押し寄せた。
頭痛、吐き気、倦怠感が彼女の魂を潰しにかかる。
彼女は歯を食いしばりながら、体を丸めた。
「……これでよし。雅人ー、起ーきーてー」
「……う……うーん……こ……ここ……は?」
彼女は椅子から飛び降りると彼の額に手を当てた。
「ここは雅人の家だよ。あー、あと、みんな無事に帰ってこられたよ」
「そう……か。それは……良かった……」
彼女は疲れた眠ってしまった彼をベッドまで運んだ。
「おやすみ。雅人」
彼女は彼の額に『永眠』と書こうとしたが今はその時ではないと思い、途中でやめた。
「明日からは私が雅人を守ってあげるよ。だから、今はゆっくり休んでね」
彼女は彼の額におやすみのキスをしてから自室に戻った。




