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腕立て伏せでもしてろ

 とある企業の地下最深部。

 雅人まさとの幼馴染が待っていた部屋の奥に扉が一つあった。

 その扉を雅人まさとは再び蹴破った。


「……まあ、羅々(らら)がここにいるって時点で必然的にそうなるよな」


「そう。これは必然。いずれ君がここに来ることは分かっていたよ。雅人まさとくん」


 幼馴染の『百々目鬼(とどめき) 羅々(らら)』の父親はスーツを着ている。


「あなたは僕の鬼の力を悪用しようとしているのですか?」


「いや、違うよ。私がやりたいことはただ一つ。この世界にうじゃうじゃいる人間たちを一人残らず殺すことだよ」


 それがあなたにとっての正義ですか。

 まあ、あなたにこの力を奪わせはしませんが。


「この世界から人間を消すということは妖怪が住みやすい世界にするということですか?」


「ああ、そうだ。やつらは貧弱だが、しぶとく残酷な生き物だ。このまま放っておいたら、いつか我々妖怪たちを潰しにかかるだろう」


 だからって、人間という種を滅ぼす必要は……。


「たしかに……たしかに人間という生き物は愚かです。しかし、全ての人間がそうだということを断言することはできません」


「君はたしか……文字使いの座敷童子、だったね」


 座敷童子の童子わらこ(姉)は雅人まさとのとなりに立つ。


「私のことを知っていましたか。まあ、百々目鬼(とどめき)の目の力を使えば、私を見つけることなど朝飯前でしょうね。それで? あなたはどうやって人間を滅ぼすおつもりですか?」


「なあに、簡単なことだよ。雅人まさとくんの中にある鬼の力を全ての妖怪に少しずつ分け与えるんだよ。あとは、私の力で人間という種が自分たちの敵だと認識するように視覚を少しいじれば最強の軍隊が誕生するよ」


 なるほど。まあ、できなくはないですね。


「最強の軍隊? 無理だな。この力をコントロールするには早くても一年はかかる。僕は力の継承者だから体の一部のように扱うことができるけど」


「君たちのそばにもう一人座敷童子がいるね……。そのはどうやって生まれたのかな?」


 まさか! 狙いは最初から!!


「『広範囲強制視界断絶』!!」


『……っ!?』


 クソ! 何も見えない!!

 早く童子わらこ(妹)を安全な場所に避難させないといけないのに!!


「は、離して! 離してよ! お姉ちゃん! 雅人まさと! みんな!!」


「おとなしくしろ。さもないと君の宝物を壊すぞ?」


 私の……宝物……。

 いやだ! それだけは壊さないで!!


「分かった……。言う通りにするから、みんなに手を出さないで」


「ふむ。賢明な判断だ」


 ふざ、けるな……。目が見えなくなったくらいで女の子一人守れないやつが鬼の力の継承者?

 笑わせるな! 僕は……いや、俺は!!


鬼姫きき! 僕はどうなってもいい! だから!!」


「はいはい、あのちんちくりんを助ければいいんでしょ」


 彼の体の主導権をにぎった鬼姫ききは言霊の力で目が見えるようにした。


「治れ。あと、お前はしばらくその場で腕立て伏せでもしてろ」


「はっはっは! そんなこと誰がやるもの、か!?」


 彼は童子わらこ(妹)から手を離すと、その場で腕立て伏せをやり始めた。


「はーい、残念でしたー。あんたの野望はこれでおしまい。あたしの勝ちだねー」


「あ、ありがとう。その……助けてくれて」


 彼女は童子わらこ(妹)の頭をガシッとつかむ。


「勘違いしないで。あたしはあんたを助けたわけじゃない。あたしの力のおかげで生きていられる存在がそんなクズに利用されるのが嫌だっただけよ」


「そっか。でもありがとう。優しい鬼もいるんだね」


 な、なんか調子狂うわね……。

 まあ、いいか。

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