ふーちゃん
とある企業の地下。
「乙さん、二人の様子はどうですか?」
「先ほどまで苦しそうにしていましたが、今は落ち着いています」
雅人はほっと胸を撫で下ろした。
「そうですか。それは良かった」
「雅人さん……どうしてここに?」
座敷童子の童子(姉)が彼にそう訊ねる。
彼はすぐ答えなかった。
彼は彼女を背負うと、ゆっくり歩き始めた。
乙さんは童子(妹)を背負うと、ゆっくり歩き始めた。
その直後、土蜘蛛の動力源だった丸いカプセルは彼らのあとを追い始めた。
「まあ、なんというか……もうバレてたんだよ。僕たちの居場所も……そして僕たちが何をしようとしているのかも」
「……つまり、病院にいる必要がなくなった……いえ、いる意味がなくなったから助けに来てくれたのですか?」
丸いカプセルが自分を無視するなと言わんばかりに彼らの前に立ち塞がる。
「まあ、そんな感じだな……。で? お前は何がしたいんだ? お前はもう自由なんだから、どこにでも行けばいいだろ」
「開ケロ! 中ニイルヤツガ、ソレヲ望ンデイル!」
カプセルがしゃべった。
まあ、とりあえず……言う通りにするか。
「はいはい、分かったよ。えっと、どうすれば開くんだ?」
「緑色ノボタンヲ押セ! ソウスレバ、開ク!」
赤とか青じゃないのか。
まあ、色なんてどうでもいいけどな。
彼は童子(姉)を落とさないように素早く緑色のボタンを押した。
その直後、水色の液体と共に水色の長髪が特徴的な美少女……いや美幼女がカプセルの中から出てきた。
水色の液体は全裸の美幼女の身を包む。
それは時間が経つにつれて水色のパーカーになっていった。
「えっと……この娘はいったい……」
「人造妖怪ダ。水ヲ操ルコトガデキル」
彼女の説明を例のカプセルがしてくれた。
「なるほどな。じゃあ、僕たちはこれで……」
「待テ! コンナ幼イ子供ヲ一人ニシテイタラ、ホボ確実に誘拐サレルゾ!!」
例のカプセルが彼らの行く手を阻む。
「じゃあ、どうすればいいんだよ。この娘の面倒を見ればいいのか?」
「ソウシテモラエルト助カル」
こいつ機械のくせに人格がちゃんとあるな。
「はいはい、分かったよ。えっと……それで、その娘はいつ目を覚ますんだ?」
「三秒後ダ」
断言したな。
嘘だったら、こいつを蹴り飛ばしてやろう。
三秒後。彼女は目を覚ました。
「……ん……あれ? 私……たしか、変な機械のコアにされて……それから」
「オハヨウ。試作品二号……イヤ、フーチャン」
フーチャン? あー、二号だからか。
「おはよう。カプセルン。この人たち、だあれ?」
「コノ人タチハ……アー、エーット……ソノ……」
雅人が彼女に手を差し伸べる。
「少なくとも僕たちは君の敵じゃない。今はとりあえず早くここの親玉を倒して、みんなでここから出よう」
「……うん、分かった」
彼女はスッと立ち上がると、彼の首筋にキスをした。
「えっと……今のは挨拶……なのかな?」
「違うよ。私は今からあなたのものって意味だよ」
例のカプセルは嬉しそうにぴょんぴょん跳ねている。
「そう、なのか。まあ、これからよろしくな」
「うん、これからよろしくね。ご主人様」
ごしゅ……まあ、いいか。
彼らが前に進み始めると、例のカプセルは嬉しそうに彼らの後に続いた。
人造妖怪のふーちゃんは雅人の服の裾を掴んだ状態で歩き始めていた。




