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えんえん

 ファミレスに入ると、従業員たちが襲いかかってきた。モップやお盆を武器にしている。

 童子わらこ(姉)が文字を書くより早く夏樹なつきの黒い長髪が従業員たちを拘束した。


「一つ貸しでいいかな? 童子わらこちゃん」


「私は助けてくれだなんて一言も言っていません。まあ、結果的に助かったのは事実です。ありがとうございます」


 夏樹なつき雅人まさとの実の妹)が「どういたしまして」と言うと、店長さんがやってきた。


「すまないねー。今日は休みなんだよ」


「ファミレスの方は休みのようですね。ですが、どうして時が止まっている世界で動くことができるのですか? あなたの力ですか?」


 店長さんは首を縦に振る。


「一応、そういうことになるね。なあに、たいしたことはしてないよ。ただ、時が止まる前に眼力で店を守っただけなんだから」


「守護の力、ですか。やはりあなたはただの猫又ではないようですね。それにあなたは雅人まさとさんのことを……いえ、雅人まさとさんの中にいる鬼のことを知っていますよね?」


 店長さんは目を細める。


「ふむ。まあ、何も知らないと言ったら嘘になるね」


「でしょうね」


 店長さんはみんなをテーブル席に案内した。


「まあ、とりあえず座って話をしよう。禁煙席で良かったかな?」


「はい、それで構いません」


 童子わらこ(姉)は夏樹なつきに従業員たちを解放するよううながす。


夏樹なつきさん、もうその人たちは私たちを攻撃しません。ですので、早く解放してください」


「うーん、すんなり指示に従ってもいいけど、どうせなら童子わらこちゃんにお願いしてほしいなー」


 お願い?


「とびっきりの笑顔で『夏樹なつきちゃん、その人たちを解放してー。お・ね・が・いっ♡』って言ってくれたら解放してあげるよー」


「はぁ? どうして私がそんな恥ずかしいセリフを言わないといけないのですか?」


 お姉ちゃーん、ケンカしちゃダメだよー。

 夏樹なつきちゃんもお姉ちゃんに意地悪しないでー。お願いだからー。

 童子わらこ(妹)が二人の間に割って入る。


「ふ、二人ともー! こんな時にケンカしないでよー!」


「ケンカなんてしていませんよ。ねえ? 夏樹なつきさん」


 夏樹なつきは笑顔で答える。


「うん、そうだよー。こんなちびっ子とケンカになんてならないよー」


「あなた今、私のことをちび呼ばわりしましたね? もう怒りました。今日という今日は許しません!」


 店内にギスギスとした空気がただよい始める。


「それはこっちのセリフだよ! ロリ! オカッパ頭! コケシ!!」


「身体的特徴でしか悪口を言えないのですか? 頭、大丈夫ですか?」


 こ、このロリBBA! 言わせておけば!!


「あー、もう頭にきた! 私の髪で体の中をぐちゃぐちゃにしてあげるよ!」


「それをする前に私はあなたの毛根を死滅させます」


 夏樹なつきは従業員たちを解放すると、黒い長髪をくねらせた。


「そんなこと本当にできるのかなー? ハッタリじゃないのー?」


「できますー。それくらいできますー」


 ああ、もう誰かこの二人を止めてよー。

 童子わらこ(妹)がその場に座り、顔を手で覆い隠すとえんえん泣き始めた。


「うわああああああん!! 二人とも仲良くしてよおおおおおおお!!」


「あっ、いや、これはその……夏樹なつきさんが」


 は?


「え? 全部、私の責任なの? そうなの?」


「もうやめてよおおおおお!! 仲良くしてよおおおおおおおおおおお!!」


 二人は童子わらこ(妹)が泣き止むまで頭を撫でたり、仲直りの握手をしたりした。

 その様子を見ていた店長さんは微笑ほほえみを浮かべていた。

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