まず一人……
童子(姉)たちは雪女と天狗と後神を探していた。
「ねえねえ、童子ちゃん。どうしてあの変な帽子被ってるお姉さんを連れてこなかったの?」
「私の文字の力があれば、大抵のことはなんとかなるからです。それと雅人さんの身に何か起きた時の保険です」
何か起きる前提なんだ。
夏樹(雅人の実の妹)は彼女の後ろを走りながら、こう言った。
「ねえ、童子ちゃん。例の三人の居場所は分かるの?」
「霊力の波動は一人一人違います。なので、あとはその波動を認識できれば、どこにいようと見つけられます」
つまり、童子ちゃんにはそれができるってことだね。
「なるほどね。ちなみに妹ちゃんはどうなの?」
「できるよー。お姉ちゃんほどじゃないけど」
童子(妹)はニコニコ笑っている。
なぜ笑っているのかは分からない。
だが、だいたい予想できる。
おそらく童子(姉)と一緒に行動できて嬉しいのだろう。
「まず一人……」
雪女の『雪女 葵』の実家に着くと、童子(姉)は彼女の部屋まで二人と共に瞬間移動した。
「さて、起こしましょうかね」
彼女は布団で寝ている。
時が止まっているせいで死んでいるように見えるが、彼女の霊力は感じられる。
童子(姉)が『解除』という文字を書くと、それは彼女の胸骨あたりから体内に入った。
「葵さん、起きてください」
「……うーん……だあれ? こんな時間に……」
彼女は目を覚ますと同時にその場で土下座をした。
「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい! ご、ごめんなさい! ごめんなさい! もう先輩に手を出したりしませんから! どうか許してくださいいいいいいいい!!」
「過去は変えられませんが、未来を変えることはできます。とりあえず、落ち着いて話を聞いてください」
彼女が顔を上げると、童子(姉)は彼女の頭を優しく撫でた。
「は、はい、分かり、ました」
「いいな、いいなー。お姉ちゃん、私にもしてー」
彼女は童子(妹)を無視……しようとしたが、あとでめんどうなことになりそうだったため、童子(妹)の願いを叶えてから話し始めた。




