修羅場ってる
うーんと、とりあえず童子姉妹を呼んだ方がいいな。
「おーい、童子姉妹ー。僕はここにいるぞー」
「え、えっと、あなたのお兄さんは何をしているのですか?」
乙さん(天蓋という笠を被った女性)が夏樹(雅人の実の妹)にそう訊ねると、彼女はこう答えた。
「何って、呼んでるんだよ。二人を」
「二人?」
その直後、手術室に座敷童子が二人現れた。
「なるほど。妙な気配の正体は十干でしたか」
「雅人ー、大丈夫ー? というか、なんで手術台に拘束されてるのー?」
あー、色々説明しないといけないなー。
彼は二人にここにいるわけとこれからやろうとしていることについて話した。
「なるほど、そういうことでしたか」
「現実にそんな連中が本当にいるんだね」
十干が部屋の隅でひそひそと何かを話している。
「あー、えーっと、この二人は敵じゃないですよ。僕の家で一緒に生活している座敷童子です」
二人はそれに補足する。
「正確には恋人(仮)です」
「そのとおりー」
あのー、みなさん。
そんな「うわー、ロリコンだー。気持ち悪いー」的な目で僕を見ないでください。
「あの、一応言っておきますけど、僕はロリコンじゃないですからね?」
「そう、なのですか? なら、雅人さんはどのような女性がタイプなのですか?」
乙さん、今それを訊くんですか?
あー、みんなの視線が刺さるー。
「え? そんなの私に決まってるじゃん。ねえ? お兄ちゃん♡」
「え? あー、まあ、そう、かな?」
それを聞いた二人が異議を唱える。
「私という彼女がいながら、あなたはいったい何を言っているのですか? 死にたいんですか?」
「そうだよ! ひどいよ! 昨日はあんなに激しく求めてきたくせに!」
童子姉の意見はまだいいとして、妹の方はおかしいぞ。
僕はそんなことしてないし、した覚えもない。
「お兄ちゃん、私が一番だよね? ね?」
「え?」
夏樹の目のハイライトが消えている。
まずい。僕は今、手足を拘束されている。
だから、回避しようにも回避できない。
「雅人さん、この際はっきり言ってください。あなたの一番は私だと」
「あ、あの」
こ、殺される!
「雅人ー、私なら雅人がしてほしいこと、ぜーんぶしてあげるよー。私にしておきなよー」
「お、お前は余計なことを言うな!」
どうすればいいんだ。
完全に修羅場ってるじゃないか。
というか、どうしてこんなことになったんだ?




