合図
えっと、十干がどこにいるのか分からないから、とりあえず現在住所を特定しないといけないな。
「なあ、他の十干の連絡先とか知らないのか?」
「連絡先は分かりませんが、どこに誰がいるのかは霊力の大きさや色、形で分かります」
それ、僕みたいな半端者に話していいのか?
「そうなのか。結構便利だな」
「そうでもないですよ。誰にも会いたくない時に限って場所を特定されたりしますから」
うーん、でも緊急時には使えそうだな。
「ま、まあ、そうだな。えっと、僕は甲さん家だけは知ってるんだけど、残り八人の居場所は分かるか?」
「すみません。日本国内にいることは分かるのですが、どの都道府県にいるのかは分かりません」
良かった。とりあえず日本国内にいるんだな。
でも、僕と鬼姫が離れていられる時間は二十四時間しかないからな。
さて、どうやって探そうかな。
「そうか……。何かで呼ぶことができればいちいち探しに行かなくていいんだけどなー」
「何かで呼ぶ……。それです! それですよ!!」
天蓋という笠を被った女がその場でぴょんぴょん跳ねた。
少し前に僕の首筋にメスを当てていた人物とは思えないリアクションだった。
「ん? なんだ? 口笛で蛇を呼ぶのか?」
「はい! そんな感じです! 私があなたを気絶させる時に使った笛を使えば、私以外の十干を呼ぶことができます!」
ふむ。たしかにそれならうまくいきそうだな。
けど、それだと十干にしか分からない音を出さないといけないな。
「そうか。なら、あとは十干にしか分からない合図というか合言葉みたいなのを音にできればいけるな」
「合言葉、ですか……」
あれ? もしかしてそういうのないのか?
「えっと、なければ思い切り笛を吹くのもありだと思うぞ」
「そう、ですね。では、そうしましょう」
うまくいくといいな。
そして、早く家に帰りたいな。
夏樹、お前は今家で何をしているんだ?
まあ、今は時が止まってるから何もできないんだけどな。
ん? 待てよ? だとしたら他の十干は今どんな状態なんだ?
ちゃんと動けるのか?
「なあ、一ついいか」
「はい、いいですよ」
いいのか。まあ、気になったままだと気持ち悪いからな。
「えっと、他の十干は今どんな状態なんだ?」
「普通に動いてますよ。基本的に十干の攻撃や能力は自分や他の十干に効くことはないので。じゃないと十干同士で殺し合う、なんてことが起こりますから」
なるほどな。そこはちゃんとしてるんだな。




