一歩前進、かな?
僕、以外の力……。
存在。個性。知性。性別。体格。思考。種族。
そうだ……僕には頼れる仲間がいるじゃないか。
「夏樹、童子姉、童子妹、家出中の白猫、幼馴染の羅々、雪女の葵、天狗の天、後神の神奈、バイト先の店長さん……はさすがに巻き込めないな、でも猫又だから猫の情報網とか使えそうだな」
「そうです。それでいいのです。つ、ついでに十干を頼ってもいいですよ?」
ん? それは僕の力になりたいということかな?
「いいのか?」
「はい! もちろんです! まあ、私以外の十干が首を縦に振ってくれないと無理なんですけどね」
まあ、独断で動くのは良くないよな。
「じゃあ、まずは他の十干のところに行かないといけないな。あー、でも僕はお前の結界から出られないしなー」
「連中が狙っているのはあなたの鬼の力です。なので、それだけここに置いていけば、あなたは自由の身です」
ん? それって、つまり……。
「僕の中にいる鬼姫をこの結界の中に置いていけってことか?」
「そういうことになりますね」
そんなことできるのかな?
まあ、一応、訊いてみるか。
「うーん、そんなことできるのかなー。なあ、鬼姫、起きてるか?」
「なあに?」
あっ、起きてた。
「お前さー、一時的に僕の中から出ることはできるのかー?」
「できるわよ。けど、それをやるとあんたは二十四時間後に死ぬわよ」
え?
「うーんと、逆にどうすればそれを回避できるんだ?」
「あたしがタイムリミットまでに、あんたの体の中に戻れば大丈夫よ」
そうだよな。僕たちは二人で一人だもんな。
分離してる時間が長いと当然そうなるよな。
「そうか。えっと、時間の延長はできるか?」
「無理よ。それ以上はあんたの命に関わるから」
そうか。せめて二日くらいあれば良かったんだが。
「あっ、あと、そこの天蓋女」
「え? 私ですか?」
余計なことは言うなよ?
「そうよ。あんた以外に誰がいるのよ。えっとね、あたしは十干とか政府とか、そういうものに関心なんてないけど、こいつが死んだらこの国滅ぼすから、それだけは覚えておきなさいよ。じゃ、また後でね」
「は、はい」
彼女はそう言うと、僕の中の深いところに潜っていった。
「まあ、そういうわけだから、今から色々決めていこう」
「はい、分かりました」
とりあえず一歩前進、かな?
 




