他の方法
さて、これからどうしようかな。
できれば家に帰りたいんだけど。
「なあ、僕ってどれくらい危険なんだ?」
「世界を……いえ、この星を一瞬で消し去ってしまうほどの力を持っている……らしいです」
らしいって……。
どうして確かめもせずに拉致したのかな。
まあ、爆弾がそばにあったら、どこかに投げたくなる気持ちは分かるけど。
「そうか。まあ、あれだな。おそらく上の連中は僕の中にある鬼の力を悪用しようとしているんだろうな」
「おそらくそうだと思います。なので、私はあなたを私の結界の中に運びました」
天蓋という笠を被った女は僕にそう告げた。
手術室の中には僕と彼女以外、誰もいない。
「うん、そこまではいいと思うよ。けど、手足を枷で拘束する必要はないんじゃないか?」
「あなたが目を覚ました時に抵抗されると思いまして」
うーん、混乱はするだろうけど、いきなり襲いかかったりはしないよ。
「僕は基本的に妹に危害を加えられなければ敵意を向けることはないよ。だからさ、そろそろ解放してくれよー」
「それはできません。その枷を外すと、結界の外にあなたの霊力や気配が漏れてしまうので」
それってつまり、透明マントの枷版ってことか?
なんでそんなもの作ったんだ?
「そうなのか。だったら、これを外さずに移動できるようにすればいいじゃないか」
「動くと効力が弱まるんです」
ええ……。
「そうか。で? 僕はいつまでここにいればいいんだ? 早く家に帰りたいんだが」
「できれば、この病院にずっといてほしいです。あなたの寿命が尽きるまで……」
うーん、時が止まっているとはいえ、一度家に帰りたいなー。
別れの挨拶とかしてないし。
「うーんと、僕が生きている限り、僕はここから出られないんだよな?」
「はい、そうです」
なら、一度……死んでみるか。
「そうか。じゃあ、一度死んでみようかな」
「はい?」
死亡扱いになれば、僕はここから出ることができるし、こいつは僕を見張る必要がなくなる。
「いや、別に自殺するつもりはないよ。ちょっとあの世に行って、死んだことにしてもらいたいだけで」
「それはダメです」
え?
「あなたには妹がいますよね? 例え、嘘でも実の兄の死を知ったら妹さんは悲しみます。妹さんの心に大きなキズをつけてしまいます。ですから、他の方法を考えてください」
「……他の方法か」
 




