子ども
夏樹(雅人の実の妹)が童子(妹)に攻撃をしかけようとしていたその時、童子(妹)にとっての救世主が現れた。
「おーい、夏樹ー。ちょっといいかー」
「はーい♡」
うわあ……切り替え早いなー。
夏樹は電気をつけると、扉をゆっくり開けた。
「お兄ちゃん、どうしたの? もしかして夜這い?」
「あー、えーっと、ちょっと言っておきたいことがあってだな」
言っておきたいこと? もしかして愛の告白!?
ダ、ダメだよ! お兄ちゃん!
私、まだ心の準備が!!
夏樹がその場でニヤけていると、雅人は彼女の頬を人差し指でつついた。
「おーい、夏樹ー。聞いてるかー?」
「あっ、うん、大丈夫だよ。それで言っておきたいことってなあに? 私たちのこれからについて?」
夏樹ちゃんって、本当に雅人のことが大好きなんだね……。
日常会話が日常会話じゃないよ。
「いや、そうじゃなくてな。そこにいるもう一人の童子についてだよ」
「へ、へえ、そうなんだー」
夏樹の冷たい視線が童子に向けられる。
童子(妹)は苦笑しながら彼女から目を逸らした。
「そこにいる童子はもう一人いる童子の分離体というか、双子の妹というか、僕と童子の子どもみたいなものだから仲良くしてやってくれないか?」
は?
「……え、えっと、この娘はお兄ちゃんと童子ちゃんの……の、あたりから聞いてなかったから、もう一回言ってほしいなー」
「え? あー、えーっと、こいつは僕と童子の子どもみたいなものって言ったぞ」
へえ……そう、なんだ……。
「童子ちゃん、ちょっといいかなー?」
「え? いや、あの、私はその……これから用事がありまして」
逃げないと殺される!
確実に殺される!
「夏樹、少し落ち着けよ。今のは僕の言い方が悪かった。だから、童子に敵意を向けるのはやめてくれないか?」
「……分かった」
雅人ー! ありがとうー!
愛してるー!
童子(妹)が雅人に抱きつこうとすると、夏樹が彼女を睨みつけた。
その直後、童子(妹)はその場で腕回しを始めた。




