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 鬼姫ききは『山本やまもと 雅人まさと』の体を一時間だけ借りて、外の世界を見に行くことにした。

 彼女が目を覚ますと彼の部屋のベッドの上にいることに気づいた。


「……ここがあいつの部屋? なんか普通すぎるわね」


 それはさておき。


「久しぶりにこちら側に来れたから少し散歩にでも行きましょうか」


 彼女は両足に妖気を込めると窓から外へと飛び立った。


「昔は自然に満ち溢れてたのに、今では民家が密集しているわね。はぁ……」


 彼女はため息を吐きながら、妖気で作った床をぴょんぴょんとっていた。


「そういえば、この辺にあたしのほこらがあったわよね? 今はどこにあるのかしら」


 彼女はそう言うと、とある山を目指し始めた。


「えっと、たしかこの辺に……。あっ、あった」


 彼女はほこらの中にあるお供え物をかき分けて小さな木箱を取り出した。


「この箱、まだあったのね。懐かしい」


 彼女はその木箱を開けると、その中に入っていた誰かの歯を二本取り出した。

 犬歯けんしのようだが、人間のそれではない。

 そう、これは鬼の歯なのである。


「今のあたし……というか、あたしの力を受け継いでいるこいつの体はこの歯に込められた力を制御できるような状態じゃないから、まだ使えないわね」


 彼女はそれを木箱に戻すと、箱をほこらの中に入れた。


「よし、帰ろう。あたしのことを知ってるやつに出会う可能性がないとは言い切れないからね」


 彼女がその場から離れようとした時、どこからともなく手裏剣しゅりけんが飛んできた。

 彼女はそれを手刀で弾いた。


「久しぶりね、木葉このは。まだ生きてたの?」


 彼女がそう言うと、手裏剣しゅりけんを投げた張本人の声が聞こえてきた。


「あなたを完全に倒すのが、私の使命です。そのためならば何度でも、あなたの前に現れます」


「姿を見せないのは相変わらずなのね。まあ、別にいいけど」


 彼女は紫色の炎を右手から出すと、それを地面に叩きつけた。


「なっ……! 逃げるつもりですか!」


「バーカ。あんたに構ってる時間がないだけよ。じょあ、またねー」


 けむり玉ではなく、鬼火で敵の注意をそれに引きつけ撤退するとは……。

 やはりあなどれませんね。


「はぁー、びっくりしたー。もう山には近づかないしよー」


 彼女はそんなことを言いながら、彼の家に戻り始めた。

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