ジト目クールロリ
オリジナル童子が目を覚ますと、実家の次によく知っている天井が目に入った。
「……えーっと、ここは……雅人さんの部屋、ですね」
「あっ、やっと起きたんだね。オリジナルの私」
童子セカンドが彼女の顔を覗きこむ。
「私はどれくらい眠っていたのですか?」
「うーん、気を失っていたの方が妥当かな。あー、それと今はもう夕方だよ」
私は数時間も気を失っていたのですか。
文字の力を使えても、精神が弱いとこうもあっさりと気を失ってしまうのですね。
「そうですか。えっと、今、雅人さんはどこにいるのですか?」
「うーんとね、晩ごはんの準備をしてるよ。まあ、私がオリジナルのことは任せてって言わなかったら、雅人はずっとここにいたと思うよ」
そう、ですか。相変わらず面倒見がいいのですね。
私はあなたのそういうところが……。
「あなたにしてはいい判断です。普段からそうしてもらえると助かります」
「えー、面倒だから無理ー」
はぁ……これだから劣化コピーは嫌いなんです。
昔の私を見ているようでイライラします。
「あなたがそういう人だということを忘れていました。先ほど私が言ったことは忘れてもらって結構です」
「あーあ、まーたジト目クールロリに戻っちゃったー」
何ですか? それは。
「それが何かはよく分かりませんが、とても不愉快です。二度と口にしないでください」
「おー、怖い、怖い。そんなの言われなくても分かってるよ。……あっ、そうだ。ねえ、お姉ちゃん」
お、お姉ちゃん?
「あなた、今なんと言いましたか?」
「え? あっ、そうだ」
戻りすぎです。
「そのあとです」
「え? あと? あー、えーっと、ねえ、お姉ちゃん」
それです。
「私はいつあなたの姉になったのですか?」
「えー、だって、オリジナルの私って長いでしょ? だから、お姉ちゃん」
まあ、たしかに私たちの関係は双子の姉妹に近いですが……。
「私はあなたの姉になる気はありません」
「あー、うん、いいよ。私がそう呼びたいだけだから」
なるほど。そういうことですか。
「そうですか。では、好きにしてください」
「え? 本当? やったー! ありがとう! お姉ちゃん! これからよろしくね!」
彼女が童子(姉)に抱きつく。
姉の方は少し嫌そうな顔をしていたが、同時に少し照れていた。




