クールすぎる
分離した童子は体に異常がないか、その場で両手を開いて閉じる動作をしていた。
たまにジャンプもしていた。
「えっと、今のところ体に異常はないみたいだね」
「そのようですね」
えっと、二人はどっちも童子なんだよな?
「雅人ー、ありがとねー。雅人がいなかったら今頃、消滅してたよー」
「そう、みたいだな。えっと、童子セカンド?」
こっちがセカンドだよな?
「え? もしかして見分けがつかないの?」
「いや、なんとなく分かるよ。分かるんだけど、決定的な違いというか、口調とか雰囲気以外はみんな同じだから間違えそうだなって」
分離した童子はお互いの顔を見始める。
口調や雰囲気以外、自分にそっくりな存在が目の前にいる。
まるでドッペルゲンガーだ。
「私は童子セカンド。好きな人は雅人だよ」
「私はオリジナル童子です。好きな人は雅人さんです」
え? なに? なんか始まったぞ。
「ねえ、私ー。どうしてもっと素直にならないのー? 雅人に甘えたい時は私みたいに雅人に抱きつけばいいのに」
「あなたは本当に私なのですか? 私はそんな子どもっぽい行動はしません。そもそも、あなたはTPOという言葉を知っているのですか?」
なんだ? なんかお互いをディスり始めたぞ。
「それくらい知ってるよー。時と場所と場合を英語にして、その頭文字を並べたやつでしょ?」
「そうです。なので、あなたはもっとそれを意識して行動してください」
えー、やだー。
「それも大事かもしれないけど、甘えたい時に素直に甘えたいって言えないのはどうかと思うよー」
「あ、相手がそんな気分じゃなかったら、どうするのですか?」
ん? なんか怪しくなってきたな。
「うーん、とりあえず自分の気持ちを素直に言ってみたらいいと思うよ。それからあとのことはそのあと考えたらいいんだからさ」
「な、なるほど。一理ありますね」
なんだろう。なんか見てて面白いな。
もう少し聞いてみよう。
「それにね、オリジナルはクールすぎるんだよ。もっとさ、猫みたいに気まぐれでいいんじゃないかな」
「猫みたいに、ですか?」
セカンドはオリジナルのことをよく知っているみたいだな。
さて、これからどうなるのかな。




