波長
雅人は童子セカンドにいじめられておかしくなっていた。
「……もう……嫌だ……」
「あれれー? もう終わりー? 私、まだ満足してないよー?」
こいつはどこまで僕をいじめれば気が済むんだ?
というか、こんなことをして本当にオリジナル童子が戻ってくるのか?
「なあ……お前、本当はオリジナル童子が戻ってくる方法なんて知らないんじゃないか?」
「……え?」
童子セカンドは彼の体を弄るのをやめると、そーっとベッドから出ようとした。
「おい、こら待て。どこに行くつもりだ?」
「ちょ、ちょっとお花を摘みにー」
冷や汗……苦笑……あと体が微かに震えている。
これは……嘘をついているな。
「それは僕の問いに答えてからでもいいだろ? ほら、早く言え」
「きゃ、きゃー! ロリコンに犯されるー! 誰か助けてー!」
棒読みなんだが……。
僕はひょいと彼女を抱き上げるとベッドに座り、僕の膝に彼女を乗せた。
「誰がロリコンだ。ほら、とっとと言え。お前、本当はオリジナル童子のこと何も知らないんだろ?」
彼女は小さくコクリと頷く。
やっぱりか……。
「どうして嘘ついたんだ?」
「……私は……オリジナルが目覚めるまでの仮の人格として、なんとなく生み出された。だから、オリジナルが目覚めたら私は消滅する。けど、それがいつなのか分からない。だから私はそれまでに色々なものに触れて、感じたいと思った。おかしいよね、そんなことしたって未来を変えられるわけないのに」
僕がお前に何を言ってもお前のその悩みは解決しないだろう。
けど、何も言わないよりかはマシだ。
「けど、お前はお前だ。他の誰かになることはできない。そんでもって、お前は自分が生きている間にやりたいことをしたいと思ったから、僕にあんなエッチなことをしたんだろ?」
「そ、それはその……。ごめんなさい」
謝るな。
「別に気にしてないからいいよ。だが、お前は投げ出そうとしている。一度決めたことを自分で否定してどうする? 偽物でもいいじゃないか。お前がやりたいこと、その時が来るまで全部やってやろうよ」
「……雅人って、たまにいいこと言うよね。童貞のくせに」
一言余計だぞ。
「おいおい、あんまりそういうこと言うなよ。僕は結構デリケートなんだから」
「そうだったね。ふふふふ」
なんだろう……こいつとは結構波長が合いそうだ。
「はぁ……お前のせいで耳とかよだれ塗れになっちゃったな。ちょっと洗ってきてもいいか?」
「うん、いいよ。私、ここで待ってるから」
彼女がベッドに座ると、彼は部屋から出ていった。
 




