マスターベーション
掃除が終わると童子セカンドは昼寝をすると言い出した。
「いや、昼寝って……。そんなことしたら夜眠れなくなるぞ?」
「私は最初からそのつもりだからいいんだよ。じゃあ、ちょっと昼寝してくるね。あっ、雅人のベッド借りてもいい? いいよね?」
断ると面倒なことになりそうだな。
僕はしぶしぶ彼女に僕の部屋にあるベッドを使ってもいいと言った。
「わーい! ありがとう! 雅人!! 愛してるー!!」
「……なんだよ、それ」
彼女はそんなことを言いながら、二階にある僕の部屋に向かった。
「おい、夏樹。何してるんだ?」
「学校の課題だよ。教科書の内容はだいたい覚えたんだけど、いまいちピンとこなくてね」
まあ、最近まで引きこもってたからな、無理もないだろう。
「そうか。それでどこが分からないんだ?」
「えーっとね、子作りの仕方についてなんだけど」
ま、まさかの保健体育!?
いや、待て。とりあえず落ち着こう。
僕は一人の男としてではなく夏樹の兄として、それについて教えればいいんだ。
何も恐れることはない。
僕は夏樹のとなりに座ると、教科書を覗きこんだ。
「ど、どれどれ」
「ほら、〇〇って普段はこんなに大きくないでしょ? それなのに、どうしてこうなるのかなーって」
いきなり直球が来たー!
「え、えーっとだな。それはあの、〇〇に刺激を与えると今から子作りするのか? って勘違いして大きくなっちゃうんだよ」
「へえ、そうなんだ。ちなみにお兄ちゃんはそういう経験あるの?」
え? ちょ、いきなりそんなこと言われても。
「ぼ、僕も一応、男だからね。そういう状態になったことはあるよ」
「それって、いつ? 何をしたら、そうなったの?」
そ、それは……。
「……時かな」
「え? 何? なんて言ったの?」
夏樹の性知識がこんなに乏しいなんてな。
「じ、自分の手で〇〇を刺激した時……かな」
「へえ、そうなんだ。それって、欲求不満を解消するため? それとも単なるマスターベーション?」
お、女の子がそんなこと言っちゃいけません!
「ど、どっちかの時もあるし、両方の時もあるな。あとは知的好奇心に負けて、そういうことをしたこともある……かな」
「なるほどねー。じゃあさ、お兄ちゃんっていつ精通したの?」
そ、その質問はアウトだー!!
「いや、それは個人情報だから、さすがに」
「なんで? 私はお兄ちゃんのこともっと知りたいし、私のことももっと知ってもらいたいって思ってるよ。だから、お兄ちゃんの全部を私に教えてよ」
あー、これはそろそろ逃げた方がいいな。
「え、えっと、ちょっとお手洗いに行ってきてもいいか?」
「うん、いいよ。ただし、私の髪をお兄ちゃんの左手の小指に巻きつけてから行ってね」
あっ、うん、これは死んだな。
「は、はい」
「よろしい」
夏樹の黒い長髪が僕の左手の小指を軽く拘束する。
僕はがっくりと肩を落としながら、用を足しに行った。




