フニャフニャ
僕は今、童子セカンドと一緒に昼食の準備をしている。
今日はスパゲッティだ。
「雅人ー、鍋に塩入れたー?」
「ああ、入れたぞ。それより、そっちのサラダはどうなんだ?」
キャベツを千切りにしている童子セカンドは「大丈夫だよー」と言いながら、ひたすら手を動かしている。
「おーい! 夏樹ー! もうすぐできるから、お皿を並べてくれないかー?」
「はーい!」
夏樹(雅人の実の妹)は黒い長髪を靡かせながら、台所にやってくる。
夏樹は食器棚からお皿を人数分出すと、それらをテーブルに並べ始めた。
「ねえねえ雅人ー、トマトは切った方がいい? 切らない方がいい?」
「うーん、そうだなー。ミニトマトだから、別に切らなくても大丈夫じゃないか?」
童子セカンドは「なるほどー」と言いながらキャベツの千切りとミニトマトを小皿に入れていく。
ミニトマトは……一人三つのようだな。
僕は勝手にドレッシングをかけようとした童子セカンドを呼び止める。
「おい、ちょっと待て」
「なあに?」
いや、なあに? じゃないだろ。
「お前、今何しようとした?」
「ん? あー、えーっと、ドレッシングをかけようとしてたね。それがどうかしたのー?」
やはりオリジナル童子の方が優秀だな。
素直さはオリジナルの方より、ズバ抜けてるけど。
「あのな、目玉焼きに何をかけるかで殺し合いにまで発展することがあるんだから、そこは気を使えよ」
「つまり、私が適当にかけるのはダメってこと?」
まあ、そうなるかな。
「まあ、そういうことになるな」
「そっかー。分かった。じゃあ、雅人のサラダには私のドレッシングをかけてあげるね」
は?
「おい、それはいったいどういう意味だ?」
「えーっとね、〇〇をかけるって意味だよ」
幼児体型でそんなことを言うなよ。はしたない。
「うん、普通に迷惑だからやめような」
「えー、絶対おいしくなるのにー」
おいしくなったら怖いわ。
「余計なことはするな。ほら、さっさと手を動かせ」
「はーい」
オリジナル童子を呼び戻すには、とりあえず三大欲求を満たす必要がある。
そのあと、首筋と頬と耳とおでこにキスをしないといけないらしい。
本当にそんな方法でオリジナル童子を呼び戻せるのかな?
僕はそんなことを考えながら、スパゲッティがシャキーンからフニャフニャになっていく様を見ていた。




