駆除屋
童子は雅人を彼の部屋まで引きずっていく。
彼女はここまで彼を無理やり引っ張ってきた。
彼の目の前で何が起こったのかを早急に説明するために。
座敷童子の童子は彼をベッドに放り投げると、彼にこう言った。
「雅人ー、大丈夫ー? 顔色悪いよ」
「お前は……いったい誰だ?」
ベッドの上で彼女を睨みつけている雅人。彼女はニコニコ笑いながら、彼に近づく。
「誰って、童子だよー。わ・ら・こ」
「違う。お前は童子なんかじゃない。あいつは虫を殺すように他人を殺すようなやつじゃない!」
彼女から笑顔が消える。
彼女は彼をベッドの隅まで追い詰めると、大きく目を見開いた。
「なら、雅人の目の前にいるこのちんちくりんはいったい誰なのかな?」
「そ、そんなの知るか! とにかく一旦離れろ!」
彼女は彼の耳元でこう囁く。
「雅人ー、どうしてそんなに怯えてるの? もしかして、私のことが怖いの?」
「そ、そんなんじゃない! 僕はただ、身近にいる存在が突然別人のようになって混乱しているだけだ!」
へえ、混乱ね……。
「本当にそれだけなのかな? 本当は私のことが怖くて怖くて仕方ないんじゃないの? いつ、さっきのやつみたいにされるか分からない。怖い、怖い……。そう思ってるんじゃないの?」
「う、うるさい! 黙れ! それより、さっきの影みたいなやつはいったい何なんだよ! お前、妖怪専門の殺し屋とか言ってたよな?」
彼女は彼から少し離れる。
「正しくは駆除屋だけどね」
「駆除屋? それは妖怪を駆除するっていう意味か?」
そんな職業が本当に存在するのか?
「うん、そうだよ。人間にとって都合の悪い妖怪を駆除する存在……と言った方が分かるかな?」
「ちょ、ちょっと待て。人と妖怪が平和に暮らしているのに、どうしてそんなものが存在するんだ?」
あっ、そっか。
雅人はお人好しだから、気づいてないのか。
「雅人の中にいる鬼姫っていう鬼の怒りを鎮めた後、二度とこんなことが起きないように人と妖怪は手を結んだ。けど、それを良く思っていない者が少なからずいたんだよ。そんなやつらが駆除屋を生み出し、裏で妖怪を抹殺し始めた。ちなみに、さっきのはそのうちの一人だよ。分かった?」
「つ、つまり、僕もいつかは……」
ターゲットにされる……いや、もうされている可能性があるということか。




