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ごっくん

 おかしいな。

 こいつって、あんな性格だったかな?

 雅人まさとは朝食を食べながら、自分の膝の上に座っている童子わらこのつむじを見ていた。


雅人まさとー、うまく食べられないよー。食べさせてー」


「え? あー、そうなのか。よし、分かった。じゃあ、二人ににん羽織ばおりもどきをやるぞ」


 まあ、僕が童子わらこの手をにぎって童子わらこの口まで誘導してやるだけなんだけどな。


「なんだかよく分からないけど、手伝ってくれるってこと?」


「まあ、そうなる、かな」


 座敷童子の童子わらこの精神がなぜ幼児並みになってしまったのかは分からないが、今はとりあえず食事を済ませよう。


「わーい! ありがとう! 雅人まさと! それじゃあ、お願いしまーす」


「はいはい」


 その様子を見ていた夏樹なつき雅人まさとの実の妹)は羨ましそうにはしの先端をくわえていた。

 いいなー、私もお兄ちゃんにあんなことされたいなー。

 精神だけ幼児退行できる薬とかないかな?


「はい、それじゃあ、右手でスプーンを持ってください」


「持った!」


 こいつ、本当に……あの童子わらこなんだよな?


「よし、じゃあ、左手でお茶碗を持ってください」


「お茶碗が重くて持てないよー。どうしたらいい?」


 まさか腕力も幼児並みになってるのか?


「え? あー、じゃあ、お茶碗が動かないように左手をそっと添えてください」


「こう?」


 学習能力は相変わらずのようだな。


「そうそう、うまいぞー。よし、じゃあ、スプーンでごはんをすくってみようか」


「……はい、できました」


 すごいな。一発でできたぞ。


「そうか。じゃあ、ここからは僕が補佐するぞ」


「……? ねえ、雅人まさとー。補佐ってなあに?」


 おっと、ここでなんで空は青いの? 的な発言がきたー。

 えっと、こういう時は。


「え、えーっと、補佐っていうのはアレだよ。手助けをするっていう意味だよ」


「へえ、そうなんだ。大人っていちいち難しい言葉を使おうとするよね。どうしてかな?」


「あー、それは……す、少しでも自分がかしこいってことをアピールしたいんじゃないかなー?」


 知能レベルが上がると、そうなる傾向があるけど本当どうしてだろうな。


「ふーん。まあ、いいや。雅人まさとー、続きしてー」


「お、おう。じゃあ、今からお前の右手をにぎるぞ」


 改めて見ると、こいつの手って本当に小さいよな。

 こんな手でよく家事できるな。


「や、優しくしてね」


「は、はい……」


 僕が童子わらこの右手をギュッとにぎると、彼女はニコニコ笑い始めた。


雅人まさとー、もしかして緊張してるの? 可愛いねー」


「そ、そんなことはないぞ。えっと、じゃあ、僕と一緒にお前の口までスプーンを近づけてください」


 彼女はゆっくりと自分の口の前までスプーンを移動させる。


「できたよ。次は?」


「口を開けて、スプーンを口の中に入れます。この時、歯とかベロを使って、ごはんが口の中に残るようにします」


 彼女は僕に言われた通りのことをした。

 理解が早くて助かるな。


「よし、できたな。あとはよく噛んでから、ごっくんすれば終わりだ」


「…………できたー!」


 あー、なんかどっと疲れたな。


「ありがとう、雅人まさと。でも、まだちょっと自信ないから、今日は最後まで手伝ってほしいなー」


「あー、はい、分かりました」


 やばい、普通に大変だわ。

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