月の光
その後、二人はお互いの体を静かに洗い、しばらく湯船に浸かるとほぼ同時に風呂から上がった。
髪と体をよく拭いて、髪を乾かし、歯を磨く。それから二階にある雅人の部屋まで早足で向かった二人は何も言わずにベッドインした。
「……雅人さん」
「ん? なんだ?」
座敷童子の童子が静かに口を開く。
「私を抱き枕にしてください」
「私を抱きしめてください、じゃないのか?」
彼女は天井を見つめたまま、ポツリと呟く。
「……意地悪しないでください」
「あー、今日はなんか抱き枕を抱きしめながら寝たいなー。けど、僕はそんなもの持ってないなー」
童子は無言で彼に近づく。
彼はわざとらしく彼女をギュッと抱きしめる。
「あっ、こんなところにちょうどいいサイズの抱き枕があるぞー。よし、今日はこれを抱きしめよう。これで今日は熟睡できるぞー」
「……ああ、雅人さんの体温がにおいがオーラが私を優しく包みこんでいきます……。このまま時が止まってしまえばいいのに……」
彼女が文字の力を使おうとしたため、彼はそれを制した。
「おい、息をするように悪用しようとするな。お前の力は僕の鬼の力より厄介なんだから」
「す、すみません。手が勝手に動いてしまって」
なぜそうなった。
「そうか。まあ、次からは気をつけろよ」
「はい、分かりました」
彼が彼女の手を離そうとすると、彼女は彼の手を強く握りしめた。
「あのー、童子さん。この手は何ですか?」
「わ、私にだって誰かの手を握りたくなる時があるんです。つまり、今日はこのまま手を繋いでいたい、ということです」
なるほど。だいたい分かった。
「なるほどな。じゃあ、今日は手を繋いだまま寝るか」
「はい!」
彼女は一生、幼児体型だが心は成長していく。
だから、いずれ恋やら愛やらについて考える日が来るだろう。
もうその時が来ているかもしれないが、彼女が本気でそのことについて考える日が来た時、彼女は自分の気持ちを正直に相手に伝えることができるだろうか。
それはまだ誰にも分からないが、その時は手助けしてやろうと思う。
まあ、彼女の気持ちが僕以外の誰かに向けられたものだった時限定だが……。
彼はそんなことを考えると、静かに目を閉じた。
月の光が二人を祝福するかのように照らしている。
二人の関係がこれからどうなるのか、それを知っている者は今のところいない。
このままちょうどいい関係で終わるのか、それともより深い関係になるのか。
どんな関係になったとしても、一歩一歩前に進んでいけたらいいね。




