表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
289/1936

月の光

 その後、二人はお互いの体を静かに洗い、しばらく湯船にかるとほぼ同時に風呂から上がった。

 髪と体をよくいて、髪を乾かし、歯を磨く。それから二階にある雅人まさとの部屋まで早足で向かった二人は何も言わずにベッドインした。


「……雅人まさとさん」


「ん? なんだ?」


 座敷童子の童子わらこが静かに口を開く。


「私を抱き枕にしてください」


「私を抱きしめてください、じゃないのか?」


 彼女は天井を見つめたまま、ポツリとつぶやく。


「……意地悪しないでください」


「あー、今日はなんか抱き枕を抱きしめながら寝たいなー。けど、僕はそんなもの持ってないなー」


 童子わらこは無言で彼に近づく。

 彼はわざとらしく彼女をギュッと抱きしめる。


「あっ、こんなところにちょうどいいサイズの抱き枕があるぞー。よし、今日はこれを抱きしめよう。これで今日は熟睡できるぞー」


「……ああ、雅人まさとさんの体温がにおいがオーラが私を優しく包みこんでいきます……。このまま時が止まってしまえばいいのに……」


 彼女が文字の力を使おうとしたため、彼はそれを制した。


「おい、息をするように悪用しようとするな。お前の力は僕の鬼の力より厄介なんだから」


「す、すみません。手が勝手に動いてしまって」


 なぜそうなった。


「そうか。まあ、次からは気をつけろよ」


「はい、分かりました」


 彼が彼女の手を離そうとすると、彼女は彼の手を強くにぎりしめた。


「あのー、童子わらこさん。この手は何ですか?」


「わ、私にだって誰かの手を握りたくなる時があるんです。つまり、今日はこのまま手を繋いでいたい、ということです」


 なるほど。だいたい分かった。


「なるほどな。じゃあ、今日は手を繋いだまま寝るか」


「はい!」


 彼女は一生、幼児体型だが心は成長していく。

 だから、いずれ恋やら愛やらについて考える日が来るだろう。

 もうその時が来ているかもしれないが、彼女が本気でそのことについて考える日が来た時、彼女は自分の気持ちを正直に相手に伝えることができるだろうか。

 それはまだ誰にも分からないが、その時は手助けしてやろうと思う。

 まあ、彼女の気持ちが僕以外の誰かに向けられたものだった時限定だが……。

 彼はそんなことを考えると、静かに目を閉じた。

 月の光が二人を祝福するかのように照らしている。

 二人の関係がこれからどうなるのか、それを知っている者は今のところいない。

 このままちょうどいい関係で終わるのか、それともより深い関係になるのか。

 どんな関係になったとしても、一歩一歩前に進んでいけたらいいね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ