猫探し
雅人は部室の扉を開ける。
「みんなー! いるかー?」
「こんにちはー……って、誰もいないね」
百鬼雪天神部の部室には誰もいなかった。
主にボランティア活動をしている部だが、暇な時は部室でのんびりしている……らしい。
「おい、羅々。みんなはどうした?」
「え? あー、多分、ボランティア活動をしに行ってるだよ」
ボランティア活動……ね。
「そうか。それで? お前はどうやって困っている人を見つけて、みんなにこなせそうなやつを選択したんだ? まさか適当にやっていないだろうな?」
「わ、私は百々目鬼だよ? 全身が監視カメラみたいなものなんだから、そのへんは大丈夫だよ。それにみんなでこんなものも作ったし」
羅々は机の上に置いてあった白い箱を持つと、こちらに見せる。
「これはあれか? 目安箱みたいなものか?」
「まあ、そんな感じだね。ここに書いてある悩みごととかトラブルを解決できそうなものから解決していくんだよー。あっ、ちなみにこれは各階の廊下に置いてあるよ。それから……」
……えー、つまり、それらを週一くらいで回収して、解決できそうなものからみんなで分担してボランティア活動をやっているということか。
ふむ。お前にしては上出来だな。
「なるほどな。なあんだ、僕がいなくてもやっていけそうじゃないか。正直、見直したぞ。羅々」
「え、えー? そうかなー? 照れるなー」
彼女の照れ顔を見ていた夏樹(雅人の実の妹)は頬をぷくーっと膨らませた。
「お兄ちゃん! お兄ちゃん! 私にもできることないかな?」
「え? あー、そうだな。なあ、羅々。夏樹にもできそうな依頼はないか?」
は? なんで私がそんなこと……いや、待てよ。ここで雅人に私が有能だってところを見せておけば、私のルートに入るんじゃないかな?
「うーん、そうだねー。猫探しとか、どうかな?」
「猫探しか……。定番だな。夏樹、できそうか?」
夏樹はビシッと敬礼する。
「できます! 何匹でも助けに行けます!!」
やる気は十分あるみたいだな。
「よし、分かった。じゃあ、一緒に行くか」
「うん!!」
こうして、二人の猫探しが始まった。




