メス三匹
生徒会室で修羅場っていると、誰かがやってきた。
「騒がしいですね。いったい何をしているのですか?」
「わ、童子! お前、いったい何しに来たんだ?」
座敷童子の童子は僕の目の前にやってくる。
彼女はメス三匹を睨みつけると、僕に手を差し伸べた。
「雅人さん、一旦ここから離れましょう。外の空気はおいしいですよ」
「え? あ、ああ、分かった」
彼が童子の手を握ると、二人は一瞬で屋上に移動した。
「え? こ、ここは」
「嫌な予感がしたので様子を見に来てみたら、やっぱり修羅場になっていましたね。まったく、嫌なら嫌とはっきり言わないから、こうなるのですよ」
これでも抵抗はしたんだが……。
「何ですか? 言いたいことがあるなら、はっきり言ってください」
「いや、その……ありがとな。助けてくれて」
彼女は小さな手で僕の手をギュッと握る。
「別にそんなんじゃありません。おっと、そろそろ昼休みが終わりますね。では、私はこれで」
「な、なあ、童子」
彼が彼女を呼び止める。
「何ですか?」
「あー、えーっと、いつも弁当作ってくれて、ありがとな」
彼女は彼に背を向けたまま、こう言う。
「ちゃんと全部食べてくださいね。少しでも残したら、一生作ってあげませんから」
「あ、ああ! もちろんだ!!」
彼女は微笑みを浮かべると、その場からいなくなった。
「ありがとう、童子。さて、戻るか」
彼は屋上を後にする。
その日の空はとても澄んでいた。




