爆発
雅人の実の妹、夏樹が生徒会室にやってきた。
修羅場が始まりそうな予感しかしないが、はたしてどうなることやら。
「お兄ちゃんは私のだよ。誰にも渡さない」
「それは困るなー。私は雅人くんのことを愛していて、これからは共に歩んでいこうと思っているのにー」
生徒会長の『飛美濃 覚』と雅人の実の妹、夏樹の間に火花が飛び散っている。
彼がその場から少し動くと、二人は彼の両サイドに移動した。
「お兄ちゃん、こんなところにいたら身長伸びなくなるよ。早く教室に戻ろう」
「雅人くん、ブラコンはヤンデレ化しやすいから私のそばにいた方がいいよ」
二人とも何を言っているんだ?
二人は僕の腕をギュッと抱きしめると、綱引きならぬ腕引きを始めた。
「お兄ちゃん! 早く戻ろうよ!!」
「雅人くん! 悪いことは言わない、ここに残るんだ!!」
これは両手に花と言っていいのだろうか?
まあ、別にこの状況が嫌というわけではないが。
こう、なんというか、今にも争奪戦が始まりそうで怖いというか……。
いや、もう始まってるな。できれば、これ以上、過激にならないようにしてもらいたい。
「あの、二人とも、一旦冷静に……」
「あっ! 雅人、はっけーん!! って、もしかして修羅場ってる?」
彼の幼馴染である『百々目鬼 羅々』の登場により、事態はさらにややこしくなった。
「まあ、そう言わざるを得ないだろうな。えっと、できれば、なんとかしてほしいなー……なんて」
「私も混ぜてー! というか、二人とも退いてー!!」
彼女は二人を突き飛ばすと、僕を後ろから抱きしめた。
「泥棒猫! 今すぐお兄ちゃんから離れろ!!」
「そうだ! そうだ! 独り占めは許さないよ!」
羅々は豊かな胸を僕の背中に押し当てながら、こう言う。
「少し黙れよ、まな板ども」
「お、おい! それはいくらなんでも言いすぎだろ!」
二人に言葉の矢が刺さる。
二人の胸に深く突き刺さったそれはクルクルと回転し始める。
二人は倒れないようになんとか踏ん張っている。
「誰が……」
「まな板だって?」
二人の目つきが変わっている。
それはまさしく猛獣の眼光だった。
今にも羅々に襲いかかりそうだ。
「かかってきなよ、エターナル絶壁」
『殺す!!』
二人が彼女に襲いかかろうとした時『爆発』という文字が二人の額に触れた。
これは……もしや……。
 




