駄々っ子
昼休み……雅人は生徒会室で生徒会長とババ抜きをしていた……。
「ん? それはどういう意味かな」
「別に隠さなくてもいいですよ。会長が知っている鬼の力のことを教えてください」
彼女は頬杖をつく。
「それは今言わないといけないのかな?」
「別に今じゃなくてもいいです」
彼女は少しだけ目を細める。
「そうか。なら、今はババ抜きに集中しよう。君だって、負けたくはないだろう?」
「そう、ですね。今はババ抜きに集中しましょう」
それからお互いの手札が一枚または二枚になるのに数分を要した。
「雅人くん、そろそろ負けを認めたらどうだい」
「いいえ、僕は最後まで諦めません! さぁ、どこからでもいいですよ!」
雅人の手札は二枚。
つまり、どちらがババだ。
会長の手札は一枚。
つまり、ここでババではない方を引けば、彼女の勝利だ。
「結構楽しかったよ。けど、そろそろ終わりにしようか!」
「ふんっ!」
なっ! ひ、卑怯だぞ! 手を少し傾けてカードの位置をズラすなんて!
僕は勝つ! どんな手を使ってでも!
「仕方ない。ここは先輩の余裕というものを見せてあげよう。ということで、おとなしくババを渡したまえ」
「分かりました。はい、どうぞ」
彼女がババを引いた瞬間、彼女は二枚のカードを目にも留まらぬ速さでシャッフルし始めた。
み、見えない! なんて速さだ!
「さぁ、引きたまえ」
「わ、分かりました」
僕が負けると、僕は生徒会に入らなければならない。
口約束とはいえ、一度交わした約束を破るのは男として……いや、人として終わる気がする。
まあ、僕は半人半鬼だが。
「えっと、じゃあ、こっちを……あれっ?」
「どうしたんだい? 早く引きたまえ」
あの、早く離してください。
「あの会長」
「何かな?」
とぼけるつもりか?
「早く手を離してください」
「……嫌だ! この手は絶対に離さない!」
つまり、これはババではないということか?
「会長、往生際が悪いですよ」
「ヤダ! ヤダ! ヤダ! 絶対離さない!!」
ただの駄々っ子になってしまっているな、これは。
さて、どうしたものかな。
彼女の手が離れるのが先か、彼が諦めるのが先か。
それはまだ誰にも分からない。




