ババ抜き
結局、トランプタワーは完成しなかった。
それ以外にもトランプを使った遊びは存在している。
「会長、次はババ抜きしませんか?」
「別にいいけど、私は負けたことないよ?」
なぜ? と問いかける前に生徒会長が覚だということを思い出したため、それを実行しなかった。
「過去はどうやっても変えられません。けど、未来は変えられます。それを今から僕が証明してみせます!」
「ほう、それは面白いねー。じゃあ、私が勝ったら君を生徒会の一員にしてもいいかな?」
え? どうして僕のような中途半端な存在を生徒会に入れる気になったんだ?
「分かりました。では、僕が勝ったら会長の秘密を一つ教えてください」
「うわー、やらしいー。乙女の秘密を知ろうとするなんて」
この人はどうしていちいち僕をからかうんだ?
「べ、別にスリーサイズとか言わなくていいですよ。興味ないので」
「スリーサイズねー。君になら、教えてあげてもいいかもねー」
会長はトランプをシャッフルしながら、こちらをチラ見した。
やっぱりこの人は僕で遊んでるな。
よし、この勝負絶対に勝つぞ!!
「それじゃあ、配るよー」
「はい」
ふむふむ、なるほど。やはり僕のところにババが来たか。
さて、どうしたものかな。
「じゃあ、私から行くよー」
「はい、いつでもどうぞ」
ババ抜きは心理戦だ。
運は関係ない。
「おっ、そうきたかー」
「……」
ポーカーフェイス&カードを一枚上に突き出す。
さぁ、それがフェイクかババか見破ってみろ!
「ポーカーフェイス……。私以外になら効果はあるけど、私には通用しないよ」
「そ、そうなんですか?」
その直後、会長は僕の持っているカードの右端を抜き取った。
「私は一応、覚という妖怪だけど趣味が人間観察だから、君がいくら無心になろうと無駄な足掻きなんだよ」
「そ、それはまだ分かりませんよ」
なんてこった。
会長は僕のちょっとした動きも見逃してくれそうにないな。
まずい、このままだと僕の敗北は確実だ。
さて、どうする?
「君の番だよ。さぁ、引きたまえ」
「で、では、失礼します」
こうなったら、もうこの手しかないな。
「あの、会長」
「ん? 何かな?」
会長の持っているカードのうち、僕から見て左端のカードを抜き取る。
「会長は僕のことをどこまで知っているんですか?」
「……それは今答えないとダメなのかな?」
多少汚くても勝てればいいんだ。
すみません、会長。この勝負、勝たせてもらいます!
はたして、二人の勝負の行方はいったいどうなってしまうのだろうか!!




