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羨ましいなー

 雅人まさとは体育倉庫で幼馴染に押し倒されている。

 その幼馴染は一種の愛情表現だと言っている。

 はたして、それは本当だろうか?


「おい、羅々(らら)。スキンシップと愛情表現、何がどう違うんだ? 簡潔に述べよ」


「え? あー、えっと、そ、そんなの分かんないよー! スキンシップはただ肌と肌を触れ合わせるだけで愛情表現はそれ以上のことをするんじゃないかなー! よく分かんないけどー!」


 なるほど。たしかにそうかもしれないな。

 けど、今はとりあえず離れてほしいな。


「それがお前の答えか。なるほどな。うん、よく分かった。けど、僕とお前は幼馴染でクラスメイトだ。恋人じゃない男女が授業中、こんなところにいたら勘違いされる可能性が高い。そうだろう?」


「わ、私はそれでもいいよ。というか、私はそうなりたい」


 あれ? この流れはまさか……。


「私は! ま、雅人まさとの……こ、ここ、恋人になりたい!!」


「……え?」


 急展開すぎて理解が追いつかない。

 こいつは今、なんて言った?


「えっと、その……少し考えさせてくれないか」


「ダメ。今すぐ答えて」


 な、なんでだ?

 なんでこんなことになっているんだ?

 また変な妖怪が忍び込んで、いたずらしてるのか?

 いや、でも、こいつに死角はないはずだから、まず接触するのも難しい。

 だとしたら、これは……。

 こいつの本音……か?


「お、落ち着けよ、羅々(らら)。というか、僕なんかのどこがいいんだよ。いつ死ぬかも分からない中途半端な存在なんだぞ? 僕は。人と鬼、どちらでもありどちらでもない。そんなやつとうまくやっていけると思うか?」


雅人まさとはさ、誰にでも優しくて文句を言いつつ最後まで付き合ってくれて、力があるのにそれを自分じゃなくて他人を助けるために使ってる。そんなお人好しで面倒見のいい夏樹なつきちゃんのお兄ちゃんのことが私は昔から大好きだった。この気持ちは私の自身のもの。誰かに言われたから好きになったとか、罰ゲームで仕方なく……っていうのでもない。私は、本当に……雅人まさとのことが異性として大好きなんだよ」


 目の前で告白をされた雅人まさとはどうしたらいいか分からず、その場でフリーズしてしまった。


「私の気持ちは伝えたよ。えっと、その……ま、雅人まさとはどう? 私のこと好き? それとも嫌い?」


「き、ききき、嫌いではない……かな」


 そう言うと思ったよ。

 うん、知ってた。


「け、けど……その……なんというか、お前が僕に対して抱いてる感情は僕にはないんだ」


「そう、だよね。雅人まさとは重度のシスコンだもんね。私なんか眼中にないよね」


 それは違う。


「そんなことはない。けど、僕はお前のことをそういう風に見たことないっていうか、考えられないというか」


夏樹なつきちゃんが羨ましいなー。私、今から雅人まさとの妹になろうかなー」


 私、何言ってんだろう。

 そんなことできるわけないのに。


「それは困る。せめて姉になってくれ」


「え? 姉? あー、お姉ちゃんかー。お姉ちゃんねー。うん、悪くないかも。あー、でも私、やっぱり妹になりたいなー。お兄ちゃーん! って言いながら雅人まさとに抱きつきたい」


 僕より身長が高い妹か……。

 うーん、どうなんだろう。


「お前、単に誰かの妹になりたいだけなんじゃないのか?」


「違うよー。もし妹になるなら雅人まさとの妹がいいなーって思ってるんだよー。そこんとこ、よーく覚えといてね!」


 なんかよく分かんないな、これ。


「はいはい、分かったよ。えっと、そろそろ離れてもらってもいいか?」


「ダメでーす。授業が終わるまで、このままでーす」


 彼女はそう言いながら彼に抱きつく。

 なんだかよく分からないが、とりあえず落ち着いたみたいだな。

 二人は授業が終わるまで体育倉庫でいちゃついていたという。

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