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そいつ、殺せない!

 あー、なんか朝からどっと疲れたなー。

 雅人まさとが制服に着替えていると彼の実の妹である夏樹なつきがノックもせずに彼の部屋に入ってきた。


「お兄ちゃん! 早くしないと遅刻しちゃうよ!」


「そうだなー。誰かさんが下着姿で僕に抱きついていなければ、こんなギリギリにならなかっただろうなー」


 それは事実である。

 しかし、今はそんなことどうでもいい。

 とりあえず早く登校しなければならない。


「そ、それはまあ……そうだけど」


「……なーんてな。というか、やっぱり制服姿、似合ってるな。かわいい、かわいい」


 彼が彼女の頭を優しく撫でると、彼女は上機嫌になった。

 嬉しそうに黒い長髪を左右に揺らしている。


「え、えー? そ、そうかなー? えへへへー」


「うん、かわいい、かわいい。でも、いつまでもこうしてたら完全に遅刻だ。だから、なる早で朝ごはん済ますぞ」


 妹は「はーい!」と言いながら、彼と手を繋いだ。

 二人は仲良く一階のダイニングに向かうと、朝ごはんを秒で済ませた。

 それから歯磨きやら何やらを済ませると、座敷童子の童子わらこが作ってくれたお弁当と授業に必要なものを持って家から飛び出した。


「朝から元気ですね……あの仲良し兄妹は」


「だねー」


 童子わらこと家出中の白猫は玄関でそんなことを言った。

 今日からは一人と一匹でお留守番だ。


 *


「えー!? お兄ちゃんと同じクラスじゃないのー?」


「あれ? 言ってなかったっけ? というか、兄妹が一緒のクラスになるわけないだろ」


 雅人まさとのクラスに転校生が来たのではないかと様子を見に来た生徒たちは会話の内容から、その子が雅人まさとの妹であることを理解した。


「そっかー。なら、私帰る!」


「いやいや、なんでそうなるんだよ。休み時間とか昼休みにまた会えるだろ?」


 お兄ちゃんは何も分かってない!

 私はできるだけお兄ちゃんと一緒にいたいんだよ!


「うちのクラスでブラコン疑惑の子が騒いでるって話を聞いたんだけど、それってもしかして夏樹なつきちゃんのこと?」


「出たな! 泥棒猫!!」


 彼女は雅人まさとの幼馴染である『百々目鬼(とどめき) 羅々(らら)』。

 一応、雅人まさとと同じクラスである。


「朝っぱら元気だねー。というか、どうして今さら登校しようと思ったの?」


「理由は色々あるけど、お兄ちゃんと一緒にいられる時間が長くなるからっていうのが一番の理由だね。何か問題ある? ないよね?」


 夏樹なつきより背が高く胸も大きい彼女はやれやれとため息をく。


「ここは勉強するところなんだよ? そんな理由で来られたら迷惑になるってことくらい分かるよね?」


「でも、それでモチベーションを維持できるのなら別にいいよね? ね?」


 朝っぱらからケンカするなよ、まったく。

 こういう時、仲裁ちゅうさいできるやつが僕以外にもいたらいいのに。

 彼はスッと二人の間に割って入る。


「二人とも、そこまでだ。というか、朝っぱらよくケンカできるな」


「お兄ちゃん退いて! そいつ、殺せない!」


 朝から物騒なこと言うなよ。

 まったく。


「いいねー。実は前から一度やってみたかったんだよねー」


「お前も相手にするな。じゃないと、今日の昼ごはん一緒に食べてやらないぞ」


 うっ! そ、それは嫌だな……。


夏樹なつき、そろそろ予鈴よれいが鳴るから自分の教室に戻りなさい。これはお兄ちゃんからの命令です!」


「りょ、了解であります! では、私はこれで失礼します!」


 そんな感じで一時休戦となった。

 やれやれ、先が思いやられるな。

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