重い一撃
あれ? もう終わり? あっけないなー。そんなんじゃ、あたしの力を制御なんかできないよー。
う、うるさい!
雅人は鬼の力なしで鬼姫と戦っている。
二人がいるのは真っ暗な空間。その中でいくら死んでも現実の自分に影響はない。
要するに雅人は彼女を倒すまで、この空間で永遠に戦い続けることができるのである。
あんたはあたしに勝てない。絶対とは言い切れないけど、あんたがそれに気づく前にあたしはあんたの心をへし折るわ。
やれるものならやってみろ! 殺人鬼!!
あー、もう頭にきたー。あんた、もう終わりよ。
彼は気づいていた。彼女の沸点がかなり低いことに。彼はそれを狙っていた。なぜなら彼女の動きが単調になるからだ。
まだ彼女の動きを完全に把握できていないが、ある程度なら分かる。
まず、攻撃は右拳から。
それが外れたら左拳……と見せかけて右拳。
それを躱すと足払いをしてくる。
それでよろけたら終わりだが、連打が来るのは分かっているためジャンプした後にブロックしていれば致命打にはならない。
あとは打撃と蹴りの嵐だ。
それを全て躱すことはできないが、タイミングが合えば……!!
これで……どうだ!!
……っ!?
彼女の右手首を掴むことに成功した僕は彼女の勢いを利用して背負い投げをした。
床に叩きつけられた鬼姫はニッコリ笑った。
……やればできるじゃない。でも……。
あ……ぐ……し、しまった……。
ものすごい力で引っ張られた僕は腹に重い一撃をくらってしまった。
彼が意識を失うと、彼女はスッと立ち上がった。
あんたの息子なら、あたしの力を制御できるかもしれないわね。
彼女は彼が目覚めるまで、彼のそばで横になっていたらしい。




