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一種のプロポーズ

 彼女は彼が何を言っているのかよく分からなかった。

 ただし、理解しようとはした。

 彼にそういう趣味嗜好があるのかと思ったが、彼が重度のシスコンであるという情報以外、いくら頭の中で検索してもヒットしなかった。


「わ、私が雅人まさとの鎖になる?」


「ああ、そうだ。ただし、それは縛りつけてほしいっていう意味じゃない。僕を繋ぎ止めておいてほしいっていう意味だ」


 鎖は何かを縛りつけるのではなく、何かと何かを繋げておく時にも用いられる。

 どうやら今回は後者の意味のようだ。

 彼女は彼の言葉の意味を理解すると、一旦彼から離れた。


「えっと、その……つまり、雅人まさとには私が必要で私は雅人まさとを一人の人間として接していればいいってこと?」


「まあ、そういうことになるかな。お前は僕の幼馴染で、しかも僕の行動をほぼ全て把握している。こんなこと、お前以外に頼めない」


 まるで自分がやっていた犯罪行為に価値があるとでも言いたげな彼の発言に彼女はひどく動揺した。

 しかし、自分が彼に必要とされているのは事実。

 ならば、断る理由などあるまい。


「わ、分かった。で、でも、私は具体的に何をすればいいの?」


「そうだなー。毎朝起こしてもらう必要はないし、弁当は童子わらこが作ってくれるし、昼はお前と一緒に食べてるから特には……あっ」


 彼が何かに気づいた。

 彼女はすかさず彼にこうたずねる。


「な、何? 何か思いついたの?」


「まあ、思いついたというか、なんというか」


 彼は口から言葉を出そうとするが、直前で飲み込んでいる。

 じれったいと思われても仕方ない。


「えーっとだな。お前の目玉を一つ僕の体に埋め込んでほしいって言ったら怒るか?」


「え?」


 彼の幼馴染である『百々目鬼(とどめき) 羅々(らら)』の両腕にある無数の目玉が痙攣けいれんした。

 なせならば、それは言葉通り、自分の体の一部を彼の体に移植するという意味だったからだ。


「いや、それは別に構わないけど……どうして?」


「僕はあまり孤独に慣れていないんだ。だから、いつも誰かに側にいてほしいと思っている。まあ、要するに……いつもお前の存在を感じていたいんだよ」


 彼は自覚していないだろうが、それは一種のプロポーズのようなものだった。

 彼女は少し頬を赤く染めながら、コクリとうなずいた。


「ありがとう。じゃあ、さっそく頼む」


「う、うん」


 彼女は少し緊張していたが、自分の左腕にある目玉の一つを彼のひたいにゆっくりと埋め込んだ。

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