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詳細はともかく

 その日の授業はいつも通り終わった。

 皆、自分たちの精神が五歳児になっていたことは覚えていないらしい。

 本当のことを伝えようかと思ったが、パニックになりかねないため黙っておくことにした。

 放課後になると、幼馴染が呼吸をするように僕の席にやってきた。


「まーさーとっ! 一緒に部室、行こう!」


「断る」


 彼女はガーンという効果音が出そうなほど、ショックを受けた。


「なーんてな。嘘だよ、うーそ」


「もうー! 冗談でも、そういうこと言わないでよー!」


 彼の幼馴染である『百々目鬼(とどめき) 羅々(らら)』はほっと胸を撫で下ろしたのち、彼の頭にゴミが付いているのに気づき、彼の頭に手を伸ばした。


「ん? なんだ?」


「動かないで。すぐ終わるから」


 ただ髪に触れられるだけ。

 それもゴミを取るという目的があるのを知っているのにかかわらず、彼は少し……いや、かなり動揺していた。

 幼馴染であろうと、色々成長途中の女の子の体が目の前にあるのだから、目のやり場に困るのは当然だ。


「よし、取れた。雅人まさと、部室行こうー。雅人まさと?」


「え? あ、ああ、そうだな。早く行こう」


 彼が立ち上がると一瞬、目眩めまいに襲われた。その辺にいる妖怪なら、とっくに意識を失っているほどの霊力を吸われたせいなのかは分からないが、彼がよろめいていることは彼女にも分かった。


雅人まさとっ!」


 彼女は手に持っていた学生(かばん)から手を離す。

 それが床に落ちるのと同時に彼女は彼の体を抱き寄せ、ギュッと抱きしめた。


「ご、ごめんな。なんか一瞬、力が抜けて……」


「どうして謝るの? それより、どうしたの? らしくないよ。私が寝ている間に何かあったの?」


 言いたくない。

 彼女に余計な心配をさせるわけにはいかない。

 彼はしばらく何も言わなかった。

 普段の彼なら、それが肯定を意味するものになってしまうことに気づけないわけがない。

 しかし、今は違った。それほど、彼は弱っていたのだ。


「やっぱり何かあったんだね。えっと、とりあえず保健室に行こう。雅人まさと、歩ける?」


「あ、ああ、多分……」


 授業中はなんとかなっていたのに放課後になると、気が抜けてしまった。

 甘かった。自分の体は自分が一番よく知っていると思っていた。けど、体は悲鳴をあげていた。

 僕はなんておろかなんだろう。

 体調管理さえできなくてどうする!


雅人まさと、一旦座る?」


「そ、そう、しようかな」


 彼女は彼を椅子に座らせると、かばんを二つ持った。

 両手ではなく、片手に二つだ。


雅人まさと、肩貸すよ」


「お、おう」


 彼は彼女の肩に腕を乗せて、ゆっくりと立ち上がった。

 彼は明らかに弱っている。

 詳細はともかく、とりあえず彼を保健室まで連れていこう、と彼女は決心した。

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