ウジウジ星人
雅人はよろめきながら、自教室に戻っていた。廊下には彼らの他に誰もいない。どうやら皆、元に戻ったようだ。
ちなみに彼の体を支えているのは座敷童子の童子と生徒会長の『飛美濃 覚』である。
「雅人さん、大丈夫ですか?」
「誰のせいでこうなっていると思ってるんだ?」
座敷童子の童子は少し申し訳なさそうな顔をした。
しかし、彼の霊力を吸わなければ屋上にあった『逆五芒星』を文字の力で消すことはできなかった。
「すみません。ですが、あの時はあれしか方法がなかったんです」
「雅人くん、もう許してあげなよ。いつまでもウジウジしてるとウジウジ星人になっちゃうよ?」
ウジウジ星人って……。
まあ、言いたいことは分かりますけど。
「そう、ですね。済んだことをいつまでも考えてたら前に進めませんよね」
「うんうん、その通りだよ。あっ、そうだ。雅人くん、君の友人を迎えに行かないといけないよ」
え? あー、そういえば、そうだったな。
羅々のこと、すっかり忘れてた。
「えっと、生徒会室は……」
「雅人ー! こんなところで何してるのー?」
おっ、噂をすれば何とやらだな。
「まあ、色々あってな。というか、お前はなんともないのか? ケガとかしてないか?」
「うん! なんともないよー!」
そうか。なら、良かった。
「でも、なんか雅人は元気なさそうだね? 大丈夫? ハグしてあげよっか?」
「いや、今はそういう気分じゃないから大丈夫だよ。それより授業に出なくていいのか? 僕は保健室で休んでたことにするけど」
彼女はニコニコ笑っている。
いったい何がおかしいんだ?
「あっ、それいいね。いただきー」
「そ、そうか。まあ、お前がそれでいいなら別に構わないけど」
青春だねー。
青春ですね。
「会長、もういいですよ。あと、ついでに童子も」
「私はついでですか」
自教室に戻ってきた雅人は何事もなかったかのように教室の引き戸を開けた。




