五体面
屋上に繋がっている扉の前。
「会長、準備はいいですか?」
「君はせっかちさんだね。いいかい? 犯人の種族すら分かっていないのに突撃するのは愚者のすることだ。けど、私たちはそうじゃない。そうだろう?」
それは……そうですけど。
「でも、このまま何もせずにじっとしているわけにはいきません」
「そうだね。というわけで、今から私が囮になるから君はタイミングを見計らって犯人を捕まえてくれ」
え? それって、まさか!
彼は生徒会長の手を掴もうと手を伸ばしたが、会長が屋上に繋がっている扉を開ける方が早かった。
「うえーん! お父さーん! お母さーん! どこー?」
「あ? なんだ? このガキは。あっ、そうか。俺がこの学校に『五』の呪いをかけたから、精神年齢が五歳になってるんだったな。はははは! どうやら実験は成功のようだな!!」
実験?
いったい何の実験だ?
それより早く犯人を捕まえないと……。
会長は五歳の女の子のフリをして犯人の方へと向かう。
犯人の笑い声があたり一帯に響く中、彼の視界には犯人の姿があった。
「あれは、だるまかな? いや、違うな。初めて見る妖怪だけど、強いのかな?」
「あれは『五体面』です」
なるほど、なるほど。
ん? 今の説明、誰がしたんだ?
扉を少し開けて犯人の様子を見ていた彼の背後にいたのは座敷童子の童子だった。
「おまっ! 何でここにいるんだよ!」
小声で彼がそう言うと、童子は彼の耳を触りながら、小声でこう言った。
「なんとなく嫌な予感がしたので来てみただけです」
「なんとなくって、お前な……」
彼女は彼の肩に手を置く。
「私が合図したら走ってください。いいですね?」
「あ、ああ、分かった」
彼は彼女の合図が出るまで、その場で待機することにした。




