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ブラックホール

 監視カメラの映像を見ていると屋上だけカメラが壊されていることに気づいた。


「会長」


「ふむ、どうやら犯人は屋上付近にいるようだね。さて、ここで問題です。今、私は何を考えているでしょうか」


 どうしてこんな時にそんな質問を……。


「どうしてって、それくらい察してほしいなー」


「そんなこと言われても僕にはさっぱり分かりませんよ」


 分からない。会長はさとりという妖怪だから他人の心が読める。しかし、彼は鬼の力を宿している人間である。しかも、彼は人として生きていこうと決めているため無闇に鬼の力を使うことはできない。


「ヒントその一、私は君に興味をいだいている」


「それは知っています」


 問題はこのタイミングでなぜあんな質問をしたのかということだ。


「ヒントその二、私は君のことを好いている」


「え?」


 ちょ、ちょっと待て。

 それはライクの方か? それともラブか?


「ヒントその三、私は君を自分のものにしたいと考えている」


「あ、あのー、会長。もしかして、僕のこと口説くどいてます?」


 彼女は何も言わない。


「え、えっと、僕はその……鬼の力を宿しているだけの人間で、会長のような素敵な方に好いてもらえるのは大変嬉しいのですが、正直釣り合わな……」


「私が知りたいのは君の気持ちじゃない。君の奥底にある欲望について教えてほしいんだ」


 僕の奥底にある欲望?


「君は鬼の力を暴走させないようにできるだけ欲望を抑制しているだろう? そのせいで君は破裂寸前のふうせんのようになってしまっている。そんな君が今回の現象を引き起こした張本人と接触したらと思うと、私は不安でいっぱいになってしまうんだよ」


「……つまり、会長は僕のことを心配してくれたんですね」


 彼女の耳が真っ赤になる。


「ま、まあ、要約するとそうなるかな」


「そうですか。それで僕を動揺させて心の奥底の声を聞こうとしたんですね。けど、それはできませんよ。僕は自分の欲望を無意識のうちにブラックホールの中に投げ入れていますから」


 それがたとえ、ホワイトホールとつながっているということを知っていたとしても、彼はそこに投げ入れる。


「なるほど。君はそういうやつなんだな。では、さっさと屋上に向かおう」


「はい、会長」


 こうして二人は屋上目指して走り始めたのであった。

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