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姉枠

 眠ってしまった羅々(らら)の手を離そうとしたが、がっちり抱きしめられてしまったため彼女をおぶって教室から出ることにした。


「生徒だけじゃなくて先生たちも五歳児みたいになってるな。いったい何がどうなってるんだ?」


 雅人まさとが廊下を歩いていると、突然校内放送が始まった。


「『山本やまもと 雅人まさと』くん、すまないが生徒会室まで来てくれ。以上」


「……今のは生徒会長のさとり先輩だな。良かった、あの人はなんともないみたいだな」


 彼は早足で生徒会室に向かった。


「会長、来ましたよー」


「久しぶり。元気だったかい?」


 元気かどうかはさておき。


「スルーしないでくれよー。私にだって心はあるんだよ?」


「会長、今はそれどころじゃありませんよ」


 彼女はニコニコ笑いながら、スッと立ち上がった。


「そうだね。もし、この現象が校内以外でも発生したら、この星は終わりを迎えるだろうね」


「怖いこと言わないでくださいよ。それより、早くなんとかしないと……」


 彼女は一瞬で彼の目の前に移動する。

 その直後、彼女は真顔でこう言った。


「原因不明。いつ、どこで、何がきっかけでこの現象が起きたのかも分からないのに?」


「それでもです。物事には因果というものがありますから」


 彼女はそれを聞くと、ニッコリ笑った。


「君なら、そう言ってくれると信じていたよ。さてと、それじゃあ、まずはこの部屋を閉鎖しようか」


 彼女が指をパチンと鳴らすと、強力な結界が張られた。


「これ、ただの結界じゃないですよね?」


「まあね。でも、これくらいしないと犯人に気づかれちゃうよ」


 やっぱり、この現象を引き起こしたやつがいるんだな。


「そうですね。それで? 僕は何をすればいいんですか? というか、どうして会長は無事なんですか?」


「さあね。五歳児だと思われたんじゃないかな?」


 失礼なやつもいたもんだな。


「ここは一応、高校ですよ? 見た目だけで判断するのはどうかと思います」


「けど、私はこの見た目のおかげで助かった。そして、君は鬼の力を宿しているおかげで助かった。私と君で新世界を作るのも悪くないが、一度でいいから推理小説の探偵になってみたいという願望があったからね。今回はやめておくよ」


「そうなんですか? まあ、とにかく今朝から今までに起きた不可解なことについて情報を共有しましょう」


 彼女はコクリとうなずくと、手招きをした。


「なんですか? 会長」


「私は君と立ち話をしたいわけじゃないんだよ。とりあえず君の背中で気持ちよさそうに寝ている彼女はそこのベッドに寝かせておくといいよ」


 ベッド? いったいどこにそんなものが……。

 彼は彼女が指差している方に目をやった。

 彼は自分の目を疑った。

 なぜならば、先ほどまでダンボール箱やら本やらが置いてあった場所に、保健室にあるベッドが置いてあったからだ。


「会長、これはいったい……」


「ここは私の生み出した結界の中だからね、ここでの私は無敵なんだよ」


 あまり深く考えないようにしよう。

 考えたら負けだ。


「よしよし、ちゃんと寝かせたね。あっ、言い忘れてたけど、君は今から私の椅子だよ」


「え? あの、それってどういう……」


 彼は会長が用意した椅子の上に腰かける。

 彼女は彼の膝の上に腰かける。


「言ったはずだよ? ここでの私は無敵だと」


「つまり、僕はまた会長の操り人形になったというわけですね」


 彼女はクスクス笑う。


「まあ、そうなるかな。けど、別に君を解剖したり性的な意味で食べたりはしないよ。だから、私のことは妹だと思ってくれて構わないよ」


「僕の妹は夏樹なつきだけです。空いているのは姉枠だけです」


 姉枠ねー。


「まあ、そういうことにしておこう。では、質問だ。今朝から今までの間に気になることがあったかな?」


「はい、ありました」


 そんな感じで二人はお互いの情報を共有し始めた。

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