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ちらし寿司

 なんか……お腹空いたな。


「あっ、おはよう、お兄ちゃん。晩ごはん、どうする?」


「え? あー、じゃあ、いただこうかな」


 雅人まさとが目を覚ますと、夏樹なつき雅人まさとの実の妹)が目の前にいた。

 こちらの顔を覗き込んでいるのに、彼女の黒い長髪は下に垂れていない。


「そっか。じゃあ、晩ごはんにしよっか。童子わらこちゃーん! お兄ちゃん、起きたよー!」


「分かりましたー」


 夏樹なつきが台所にいる座敷童子の童子わらこにそう言うと、童子わらこはきちんと返事をした。


「お兄ちゃん、大丈夫? 手……いや、髪貸そうか?」


「いや、大丈夫だよ。というか、髪は女の命なんだから、あんまり他人に触れさせるなよ」


 彼が上体を起こし、立ち上がろうとすると彼女は彼の膝の上に座った。

 向かい合ってはいるが、抱きしめられているため彼女の顔は見えない。

 おまけに黒い長髪も彼を抱きしめるように絡みついている。


「お兄ちゃんは特別だよ。だから、私のことちゃんと見てよ」


「そ、そんなこと言われてもな……」


 大きな咳払い一つ。


「イチャつくのもいいけどさー、晩ごはんの準備できたから、そろそろやめてくれないかなー?」


羅々(らら)、お前まだいたのか」


 彼の幼馴染である『百々目鬼(とどめき) 羅々(らら)』はニコニコ笑っている。


「うん、いたよー。悪い?」


「いや、別に悪くはないけど」


 親にちゃんと連絡してあるんだろうな?


「なら早く食べようよ。今日は、ちらし寿司だよー」


「ほう」


 今日、なんかあったっけ?


「あっ、別に深い意味はないからね? 単にそういう気分だっただけだからね?」


「はいはい」


 あれ? そういえば、白猫あいつの姿が見えないな。


「ダーリン! ごはんだよー!」


「ぐふっ! お、おう、分かった」


 家出中の白猫が彼の顔面にダイブした。

 彼女は彼の顔に張り付いている。


「ダーリン、好き好きー」


「分かった。分かったから、一旦離れてくれ。このままだと窒息で死ぬから」


 夏樹なつきが彼女を引き剥がすと、彼女はじたばた暴れ始めた。


「あー! もうー! 何するのー! ダーリン! 助けてー!」


「いや、そうなった原因はお前だろ。まあ、いいや。夏樹なつき、もういいぞ」


 彼女は「はーい」と言いながら、白猫を解放した。

 彼が白猫を抱っこすると白猫は嬉しそうに、ヒゲをヒコヒコと動かした。


「よし、じゃあ、晩ごはんにするか」


「うん!」


 その日食べた『ちらし寿司』はなんだかとっても優しい味がした。

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